2004 Fiscal Year Annual Research Report
中性子フォノン散乱による中間スピン状態Co^<3+>の軌道状態とスピン転移の研究
Project/Area Number |
16540310
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
浅井 吉蔵 電気通信大学, 電気通信学部, 教授 (00109795)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 勝 電気通信大学, 電気通信学部, 教授 (20196869)
小林 義彦 電気通信大学, 電気通信学部, 助手 (60293122)
秋光 純 青山学院大学, 理工学部, 教授 (80013522)
山田 和芳 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (70133923)
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Keywords | スピン転移 / 軌道秩序 / Jahn-Teller効果 / フォノン / LaCoO3 / 中性子磁気散乱 |
Research Abstract |
LaCoO_3では、100K近傍でCo^<3+>イオンが非磁性の低スピン状態(LS, S=0)から常磁性の中間スピン状態(IS, S=1)へスピン転移をすることが提案されている。本研究では、Jahn-Teller activeな中間スピン状態の軌道状態の解明を目的に、スピン転移に伴うフォノン異常とLSからIS間への磁気励起を中性子散乱実験により調べた。 菱面晶系LaCoO_3のフォノン分散の概要を知るために、擬立方晶の主軸に沿ってのフォノン分散を調べた結果、単位胞のdoublingによるzone foldingを強く反映した分散関係を明らかにした。スピン転移前後の温度で擬立方晶の[δ,^<TM>,^<TM>]_c方向のフォノンについて詳しく調べたところ以下の事柄が明らかになった。 1)ラマン散乱で明らかになっているモード(O_2 rolationとLa vibrationモード)につながる2つの横波光学フォノンはスピン転移後にエネルギー低下と巾の増大を示す。スピン転移に伴うsofteningは、[0.5,0.5,0.5]_cで最も顕著であるが、全BZに広がっている。 2)音響フォノン(縦波LA,横波TA)は、スピン転移の前後でエネルギー、巾とも明瞭な変化がない。このことは、超音波で観測されるスピン転移に伴う縦波の音速異常(softening)がBrillouin zoneのΓ点周辺の極く限られた領域でおこることを示す。 IS状態出現に伴う光学フォノンsofteningと軌道秩序の関係については現在考察中である。 LS状態からIS状態への磁気励起を調べるために、[1,0,0]_c周辺と比較のために[3,0,0]_c周辺の非弾性散乱を調べた結果、8Kでは[1,0,0]_c周辺では15meV以上のエネルギー領域でLS→IS遷移に伴うと思われる非弾性磁気散乱の増加が観測された。しかしながら、同じエネルギー領域で光学フォノンによる散乱があるため、この増加が真にLS→IS遷移によるものと結論つけるためには更なる検討が必要である。
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