2005 Fiscal Year Annual Research Report
中性子フォノン散乱による中間スピン状態Co3+の軌道状態とスピン転移の研究
Project/Area Number |
16540310
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
浅井 吉蔵 電気通信大学, 電気通信学部, 教授 (00109795)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 勝 電気通信大学, 電気通信学部, 教授 (20196869)
小林 義彦 電気通信大学, 電気通信学部, 助手 (60293122)
秋光 純 青山学院大学, 理工学部, 教授 (80013522)
山田 和芳 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (70133923)
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Keywords | スピン転移 / 軌道秩序 / Jahn-Teller効果 / フォノン / LaCoO_3 / 超音波測定 / スピン状態緩和 / 軌道揺らぎ |
Research Abstract |
LaCoO_3では、100K近傍でCo^<3+>イオンが非磁性の低スピン状態(LS,S=0)から常磁性の中間スピン状態(IS,S=1)へスピン転移をすることが提案されている。本申請研究は、Jahn-Teller activeな中間スピン状態の軌道状態の解明を目的に、スピン転移に伴うフォノン異常とLSからIS間への磁気励起を中性子散乱実験により明らかにすることが目的であった。中性子散乱の実験は昨年度に終了し,本年度は、その結果を纏めると共に,超音波によりスピン転移に伴うフォノン異常を調べた。 本研究では,1軸圧力下での熱処理により菱面晶の単一ドメインからなる単結晶を作製し、[111]方向に伝搬する縦波、横波の超音波測定を4 600Kの温度範囲で行なった。音速に関与する弾性定数には菱面晶系の対称性のあることを確認した後、縦波につき以下の事柄を明らかにした。 1)f=10MHzで測定した弾性定数は100K近傍と500K近傍でソフト化を示す。 2)約100Kより高温で,音速は顕著な周波数依存を示し,f=100MHzでの測定では,500K近傍のソフト化は観測されない。 1)の結果は,スピン状態に依存する最適格子体積を仮定した弾性体モデルにより定量的に解析し、100K近傍のソフト化はLS→ISスピン転移によるもの、500K近傍のそれはLSにHS(高スピン)が混合することによることを示した。得られたパラメータはLaCoO_3の格子体積の温度変化を正しく再現する。2)の周波数分散をデバイモデルにより解析した結果,(a)周波数分散の振幅、緩和時間が共に温度変化すること,(b)緩和時間は試行頻度186×10^6 s^<-1>,活性化エネルギー11meVの熱活性型であることを明らかにした。この"遅い"格子緩和には、IS状態Coの軌道秩序の揺らぎが直接的、又は間接的に関与すると考える。後者は,軌道秩序があるために、IS、HS間のスピン状態間の緩和率が軌道秩序の揺らぎと同程度に抑えられるために音圧に追随しないという機構による。本研究は、LaCoO_3では、金属的伝導を示す500K以上の高温でも軌道秩序とスピン状態は100MHz程度の時間スケールで揺動することを示している。
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