2004 Fiscal Year Annual Research Report
強相関電子系におけるフラストレーションの効果の理論的研究
Project/Area Number |
16540313
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
常次 宏一 京都大学, 基礎物理学研究所, 教授 (80197748)
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Keywords | 強相関電子系 / フラストレーション / 軌道秩序 / パイロクロア格子 / カゴメ格子 / 磁気秩序 |
Research Abstract |
パイロクロア格子上のスピンと軌道揺らぎに相互作用による秩序過程について詳細な数値的研究を行った。バナジウムスピネル化合物において連続しておこる構造相転移と磁気相転移の起源に関して、幾何学的フラストレーションが存在する環境における軌道自由度とスピン自由度の相互作用の重要性を指摘し、これらの相転移について既に平均揚近似に基づく理論を以前提唱していた。今年度は、平均場近似を超えて熱揺らぎおよび量子揺らぎの影響を定量的に調べ、相互作用の強さと温度の関数として相図を決定した。具体的には、スピン、軌道、格子歪の相互作用を表す有効モデルについて、有限温度における様々な物理量をモンテカルロ法によって計算した。その結果、温度を下げていくと、まず格子歪を伴う軌道秩序の1次転移がおこり、さらに低温で磁気秩序の2次転移がおこることを発見した。また磁気構造を決定し、中性子回折で同定されたものと一致していることを示した。特に磁気秩序の発現において、軌道秩序の存在によるフラストレーションの部分的解消が本質的な役割を果たしていることを示し、さらに量子揺らぎの効果を取入れると磁気モーメントの実験値を説明できることを示した。 カゴメ格子の磁場下の熱力学を研究した。特に飽和磁場、零温度近傍の振る舞いを詳細に調べた。絶対零度においては、磁場を強くしていくと飽和磁場のところで磁化が有限のジャンプを示す1次転移がおこる。この転移は、カゴメ格子中の6員環の局在したマグノンがボーズ凝縮するために起こる。この局在マグノンの熱力学を低温極限では、hard hexagon模型で記述できることを証明し、低温の漸近領域で厳密に熱力学量を計算することに成功した。その結果、有限温度においてもマグノンのボーズ凝縮する相転移が存在し、熱力学量の特異性は3状態ポッツ模型の普遍クラスに属することが判った。
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