2004 Fiscal Year Annual Research Report
高温超伝導体におけるインコヒーレント局所構造のNMRによる検出
Project/Area Number |
16540328
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
後藤 貴行 上智大学, 理工学部, 助教授 (90215492)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 栄男 上智大学, 理工学部, 助手 (40327862)
中島 理 国立秋田工業高等専門学校, 自然科学系, 助教授 (90261544)
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Keywords | NMR / ランタン系高温超電導体 / 構造相転移 / ストライプ秩序 / 局所構造 |
Research Abstract |
La系高温超伝導体La_<2-x>M_xCuO_4(M=Sr,Ba)では低温で、高温正方晶(HTT)から中間斜方晶(OMT)、LBCOの場合にはさらに低温正方晶(TLT)へと構造相転移する。これらはCHO_2面のバクリング(CuO_6八面体の傾き)によるものであり、特にTLT相への転移は電荷のストライプ秩序及び超伝導の異常な抑止の原因になっていると言われている。一方、逆にストライプ秩序が高温超伝導の発現機構であるという理論もあり、興味が持たれている。このバクリングパターンには、X線回折などの手法で観測される平均構造とは異なる局所的なインコヒーレント構造が隠れているという実験結果が、最近、繰り返し報告されているが反論も多く未だ一致をみていない。我々はこの局所構造を探索するため純良な単結晶を用い、局所電場勾配(結晶場)に敏感なNMR測定を行って来た。NMRは、特に散乱実験では検出できない、空間的にインコヒーレントな構造も捉えることができることが特徴である。 磁場中において試料方位を回転させながらCu-NMRスピンエコー信号強度を調べた結果、ピークの分裂やブロードニングが観測された。バクリングによる電場勾配テンソル主軸の傾きを仮定してシュミレーションを行った結果、LSCOでは、散乱実験で報告されている転移温度近傍まで温度を上げると、NMRと散乱実験の結果に食い違いがみられ、バクリングが空間インコヒーレントになっていることを示している。一方、LBCOでは、TLT相に対応したバクリングが散乱実験で求められた転移温度よりもはるかに高温まで存在しており、これまで散乱実験で報告されているTLT-OMT相境界にくらべてはるかに高い温度までインコヒーレント構造が存在していることが明らかになった。
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Research Products
(3 results)