2004 Fiscal Year Annual Research Report
圧力誘起非晶質化から再結晶に至るまでの統一的シナリオ
Project/Area Number |
16540343
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
渕崎 員弘 愛媛大学, 理学部, 教授 (10243883)
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Keywords | 圧力 / 構造相転移 / 非晶質化 / 分子性結晶 / クラスター / 最適化 / ポリマー化 |
Research Abstract |
圧力誘起による低対称結晶相→非晶質状態→高対称結晶相への一連の変化を、圧力誘起によってこの一連の変化を起こすことが実験的に知られている分子性結晶ヨウ化錫を具体的にとりあげてこれをモデル化した。ヨウ化錫結晶はヨウ素原子をホストとする格子に錫原子が四面体侵入位置を占めて構築されると考えると後者の侵入に関して局所的規則を得ることができる。こうしてヨウ化錫の一連の構造変化は与えられた錫の化学ポテンシャルの下での錫原子配置の最適化問題として定式化できる。この局所的規則は有限であり、錫原子を格子ガスとみなした格子ガス模型のハミルトニアンを書き下すことができた。 近年、液相内での相転移に関心が寄せられている。上記のヨウ化錫の取り扱い方は、これを液体状態に適用した際に、まさにクラスター化による相転移を示唆するものである。そこでヨウ化錫に対して放射光によるX線その場観察を行い、この可能性を探った。この結果、温度-圧力相図上での低圧結晶相の融解曲線が、圧力誘起により液相内での相転移を起こす黒リンのそれと極めて類似していること、即ち、融解曲線に極大を有することが明らかになった。また、この極大より低圧側で融解を経験した試料は固化後、元の結晶状態を回復するが、高圧側で融解した場合は回復しないことも明らかになった。即ち、高圧側液体では単一の分子がその最小単位になっていないことが期待される。来年度は液体状態での回折パターンをとり、この点を直接明らかにする。 また、このことを理論的に調べるために分子内に複数の力の作用点を置くモデルを取り扱うことにする。これらの作用点間に距離の逆べきに比例する相互作用が働く場合の取り扱い方をエヴァルト法により一般化した。来年度はこのモデルをヨウ化錫だけでなく水素結合で相互作用する水分子系にも適用し、分子のクラスター化による局所構造の突然の変化が起こるかどうかを明らかにして行く。
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Research Products
(2 results)