2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16540351
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
富永 広貴 佐賀大学, 医学部, 助教授 (10258387)
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Keywords | カオス / 輸送現象 / 射影演算子法 / 記憶関数 / 揺動力 / 時間相関 |
Research Abstract |
本研究は、カオスや乱流が存在するとき、散逸構造の下ではどのような物理過程が存在しているのかという問題、すなわち、エネルギー散逸,熱の発生,エントロピー生成などの熱統計力学的なrealisticな輸送現象としての側面から力学系を観測する為の基礎となる研究である。具体的にはカオスや乱流を表わす非線形決定論的方程式に射影演算子を適用して、揺動力を含む線形確率方程式を導出する。そこではカオスによるランダムな揺らぎを表す揺動力と記憶を表す記憶関数が定義される。そして、カオス摩擦係数などの輸送係数は、揺動力の時間相関関数より得られる。カオスや乱流の数値シミュレーションを通してカオス輸送現象の存在を明らかにし、それに伴う輸送係数を具体的に求め、その物理的な意味を解明するというのがこの研究の目的であるが、現在のところ典型的なカオス力学系であるDuffing系(非自律散逸系),エノン-ハイレス系(保存力学系),レスラー系とローレンツ系(自律散逸系)を研究対象として解析を行っている。特に第一段階として周期外力のかかった系としてはもっとも簡単なカオス系であるDuffing系に関してこの手法のプロトタイプを作ることを試みている。 理論的には、ここで定義された揺動力の時間発展は非線形的な発展をするため直接計算することができないため、時間発展が直接計算できる非線形力を新たに定義する。非線形力の時間相関関数と記憶関数との関係からカオス誘導摩擦係数を導出することができる。まだ論文にはなっていないが、この一年の成果として、我々の定義した非線形力の時間相関関数とマクロな運動を表わす振動数行列によりマクロな力学変数の持つ時間相関の構造を厳密に記述することができる事がわかってきた。
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