2005 Fiscal Year Annual Research Report
時間依存組替えチャネル結合法の開発とミュオン活性化の計算
Project/Area Number |
16540356
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
木野 康志 東北大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (00272005)
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Keywords | 少数多体系 / ミュオン / 陽電子 / 共鳴状態 / エキゾチック原子分子 / ミュオン触媒核融合 |
Research Abstract |
時間依存組替えチャネル結合(TDCRC)法の計算コードの開発を行い、ミュオンや陽電子の原子衝突問題に適応し、計算コードの調整を行うと共にこの方法の有効性を検討した。ミュオン原子衝突では、負電荷ミュオンの水素同位原子核間の移行反応(例えば、dμ+t→d+tμ)を計算し、陽電子原子衝突では、陽電子と水素原子衝突を計算し、ポジトロニウム生成、励起、イオン化の断面積を計算し、文献値との一致をみた。陽電子と水素原子衝突における直接消滅断面積を初めて計算し、更に陽電子消滅時の電子・陽電子の重心の運動量分布を求めた。この運動量分布は、消滅光子のドップラーシフトとして観測可能である。陽電子消滅には、衝突中に接触した電子と陽電子が消滅する「直接消滅過程」と、衝突中に形成したポジトロニウムが衝突後に消滅する「間接消滅過程」がある。2つの過程では間接消滅断面積が数桁大きいためこれまで直接消滅断面積の計算が困難であったが、衝突時間に比べポジトロニウムの寿命も数桁違うため、時間依存の方法により衝突中に起こる直接消滅過程の断面積を求める事ができた。間接消滅過程の運動量分布は単色であるのに比べ、直接消滅過程の運動量分布は衝突中の電子状態を反映し多彩な分布を示す。陽電子水素原子衝突では、標的内電子の衝突中の励起過程の時間依存性や、入射陽電子エネルギー依存性等を詳しく調べる事が出来た。 ミュオン活性化反応(Heμ+d→He^<2+>+dμ)について、ミュオン移行反応の断面積を計算した。この反応においては、ミュオン分子共鳴状態(dHeμ)を経る過程の反応率が高くなると予想されるため、この共鳴状態近辺の入射エネルギーでの計算を行った。共鳴の位置と幅は、束縛状態近似の計算により目安をつけ、散乱計算により共鳴の全幅と部分幅を求めた。部分幅は、Heμ+dチャネルとdμ+Heチャネルで対称ではなく共鳴状態により大きく異なった。今後より系統的な計算により実際のミュオン触媒核融合実験との比較が可能になる。
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