2005 Fiscal Year Annual Research Report
原子気体のBECにおける新しい量子ダイナミクスの実験的研究
Project/Area Number |
16540357
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
熊倉 光孝 京都大学, 大学院・理学研究科, 助手 (30324601)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 義朗 京都大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (40226907)
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Keywords | 量子縮退状態 / Bose-Einstein凝縮 / BEC / 量子渦 / レーザー冷却 / 磁気トラップ / 光双極子力 / 極低温原子気体 |
Research Abstract |
昨年度、光双極子力を利用した重力の補償を行うことで、トラップ磁場の反転によりRb原子のボース凝縮体(BEC)中に循環量子数4を持つ高次量子渦を安定に生成することに成功した。そこで本年度は、この重力補償下で量子渦の時間発展を観測し、その崩壊過程の観測を試みた。 重力補償を行わなかった場合、量子渦を観測可能なBECの保持時間は1ms程度と短かったが、重力補償により約4倍の4ms程度にまで観測可能時間を伸ばすことに成功した。そこで次に、渦が対称軸から傾斜したり、分裂して絡み合っている場合など、複雑な構造を持つ場合にも対応するため、観測法としてBECの断層撮影法を新たに導入した。その結果、これまでの全体投影法では構造が観測できなかった4ms以上のBEC保持時間でも、実際には10ms程度までは量子渦や不均一な原子密度分布がBEC中に存在していることが確認できた。 量子渦の分裂はこの系では観測できなかったが、これは、磁場反転後にBECが反トラップ状態となり、保持中に対称軸方向にBECが広がって原子数密度が減少するため、渦のサイズが拡大したり断層撮影時のS/Nが大きく悪化し、詳細な構造の観測が困難であることが原因と考えられた。そこで、新たに軸方向への光トラップの導入を行って保持中の密度変化を抑制し、渦の時間発展のより詳細な観測を行った。その結果、高次量子渦崩壊後の姿と考えられる原子密度における直線状の窪みを確認することに成功した。 この観測結果は2回対称の摂動で期待される崩壊モードに対応し、循環量子数1の量子渦が4つ直線的に並んだものと考えられる。このモードが起こる理由についても理論的に考察した結果、渦がBEC中心から僅かに外れて生成された場合でも、渦が感じる対称性が2回対称の摂動と見做されて、この崩壊モードへの不安定性が大きく成長するためであることも分かった。
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Research Products
(3 results)