2004 Fiscal Year Annual Research Report
アモルファスクラスレート水和物の構造とダイナミクス
Project/Area Number |
16540368
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山室 修 東京大学, 物性研究所, 助教授 (20200777)
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Keywords | アモルファス / クラスレート水和物 / 水素結合 / 疎水性水和 / 中性子散乱 / 熱容量 / 構造 / 低エネルギー励起 |
Research Abstract |
今回の研究で必要な蒸着試料用の断熱型熱量計の配線や測定回路系の工作を進めた。あと1-2ヶ月後に試運転を開始する予定である。また、熱量計に付属する気体導入ラインの製作を行った。基本となる真空テストなども既に行っており、熱量計本体が完成次第使用可能である。中性子散乱実験で対象としている気体ゲスト分子のアモルファスクラスレート水和物を生成するには、一旦ゲスト気体と水蒸気の混合気体を作成しそれを蒸着する必要がある。それを可能にするため、大容量(50リットル)の気体溜と0.5MPaまでの耐圧をもつ金属製の蒸着ラインを製作した。これに関しては以下に述べるように既に使用を開始している。 以上の装置関係の仕事と並行して、幾つかの気体アモルファスクラスレート水和物の中性子散乱実験を行った。ゲスト分子としてはXeとSF_6を選択した。構造緩和による変化を見るため、50Kから120Kの幾つかの温度でアニーリングを行った。中性子散乱実験は高エネルギー加速器研究機構物質構造科学研究所の中性子散乱実験施設(KENS)において行った。まず、非弾性散乱実験(LAM-D分光器を使用)を行い、試料の振動状態密度を調べた。次に、中性子回折実験(HIT分光器を使用)から、ゲスト分子と酸素原子または重水素原子の2体相関を見ることによって、ゲスト分子の周りのケージ構造の形成度を調べた。さらに、中性子小角散乱実験(SWAN分光器を使用)から試料の空間的不均一性についての情報を得た。これらの結果から、ゲスト分子の導入により、疎水性水和効果を通じてケージ状構造の形成および水素結合構造の強化が起こり、それに伴って低エネルギー励起が減少することが分かった。
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