2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16540374
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
片山 芳則 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 量子ビーム応用研究部門, 研究主幹 (20224462)
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Keywords | 水 / 液体 / 構造 / 高圧力 / 高温 / X線回折 / 放射光 / 水素結合 |
Research Abstract |
本研究は、我々にとって最も重要な液体であり、その特異な性質のため広い分野で関心を持たれている水について、超高圧下の構造をX線回折実験によって調べるものである。昨年度開発したカップ型のダイヤモンド製容器と貴金属製のフタを用いることにより、本年度は従来の研究に比べ格段に高い圧力での測定を行うことに成功した。具体的には、大型放射光施設SPring-8の原子力機構ビームラインBL14B1のキュービック型マルチアンビルプレスを用いて圧力9.1GPa、温度423℃まで、共用ビームラインBL04B1の2段式マルチアンビルプレスを用いて圧力17.1GPa、温度約572℃までエネルギー分散型X線回折測定を行った。常温常圧の水には、水分子が水素結合でつながったネットワーク構造が残っている。そのため、分子の配位数は5程度と、単純な液体の10程度に比べて小さい。本研究によって水の構造変化は以下のように起こることが明らかになった。(1)常圧の水の構造因子S(Q)は、小さな第一ピークのすぐ隣に第2ピークがある特異な形をしているが、圧力を加えることによって、第一ピークが急激に大きくなると同時に第2ピークが吸収され、単純な液体のS(Q)と同じような形になる。約5GPa以上でS(Q)は剛体球モデルでよくフィットできる。(2)4GPa程度までは水分子間の距離はほとんど変化せず、水分子の配位数が急激に増加し単純な液体の値である10に達する。それ以上の圧力では、配位数はほとんど変化せず、水分子間の距離が減少していく。(3)約4GPa以上では、構造因子S(Q)の第一ピークの位置は、規格化した体積の-1/3にほぼ比例する。これは、この圧力領域では一様な収縮が起きていることを意味する。本研究によって、水の構造変化のメカニズムが圧力によって変化することが始めて明らかになった。
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