2006 Fiscal Year Annual Research Report
高精度数値モデルによる北太平洋深層循環Pathwayの基礎研究
Project/Area Number |
16540396
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
遠藤 昌宏 東京大学, 気候システム研究センター, 教授 (90111583)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
羽角 博康 東京大学, 気候システム研究センター, 助教授 (40311641)
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Keywords | 高精度海洋大循環モデル / 太平洋深層循環 / 鉛直拡散係数 / トレーサー実験 / 3次元PATHWAY / 深層上部return flow / デルタ14C観測値 / ブロッカーのコンベアベルト |
Research Abstract |
現実的な地形を含む世界海洋大循環モデルを用いて、北太平洋の深層循環の3次元構造を明らかにする目的で、気候値の海上風と海面気温、淡水フラックス分布を与えて、数値シミュレーション実験を行った。 これまでに、サモア海峡から北上する底層水の流量は、北太平洋深層上部の鉛直拡散係数の絶対値と鉛直構造に依存するが、底層水の北上流路は、海底地形に強く拘束されることがわかっている(H16-17)。南極周極流から太平洋底層に流れ込む高密度の周極深層水は、サモア海峡から一端北太平洋海盆へ入り、その後、ウエークpassag、クラリオンpassage等、を経て、ハワイ島の北東海域から上昇し、深層上部で西向き帯状流に乗る。これは、人工的なトレーサー放出実験により確認できるが、さらに、流量保存のラグランジュ粒子を放出する実験により確認した。また、Δ14C(海面起源)の拡散実験を行い、観測値と比較した結果、もっとも年齢の古い水が上記のハワイ北東海域に見いだされることがわかり、上に述べた北太平洋の深層水の流路構造の存在がより確かとなった。 さらに、帯状流となった深層上部水や低緯度で底層から上昇する水の挙動は、鉛直拡散係数の鉛直構造に依存していることがわかった。係数が深層上部で上向きに急激に減少する場合(Tsujino et al.)、水が主躍層付近まで上昇するには十分な浮力が与えられないため、ほとんどの深層上部水は、南大洋に西岸境界流として南下する(モデルのreturn flow)。一方、係数が上向きに比較的緩やかに(あるいは一定値)に減少するときは、躍層上部から表層エクマン上昇域につながり、中層〜表層経由でインド洋、南大洋へ戻るという、もとのBroeckerのコンベアーベルト説に近い循環となる。 深層上部で実測されたΔC13やΔHe3の分布によると西岸や東岸に偏った南下流の痕跡はない。太平洋深層上部の西岸(モデル)あるいは東岸海域(Reid, Schmitz)でのreturn flowの存在やTsujino式の鉛直拡散係数の鉛直プロファイル妥当性に疑問が生じる結果となった。 次期の研究では、上記の作業仮説をふまえて、トレーサー分布を最もよく表現する鉛直拡散係数の3次元構造を明らかにする。
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