2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16540400
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
伊藤 久徳 九州大学, 理学研究院, 教授 (80112100)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
廣岡 俊彦 九州大学, 理学研究院, 教授 (90253393)
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Keywords | 対流圏・成層圏相互作用 / プラネタリー波 / 北大西洋振動 / 太平洋・北アメリカパターン / 環状モード / アリューシャン高気圧 / 突然昇温 |
Research Abstract |
今年度は,対流圏と成層圏の相互作用するモードを特異値分解という方法で調べた。これは定常という仮定の下で,帯状非対称の基本場における対流圏と成層圏の相互作用する準共鳴モードを抽出することと言い換えることができる。定常とは言っても実際に想定している現象は低周波変動であり,この仮定が許されることはこれまでの研究結果から分かっている。この種の研究ではこれまでもっぱら対流圏が研究対象であったが,ここでは成層圏まで含めることで,対流圏と成層圏の相互作用するモードを取り出すことを試みた。また太平洋域と大西洋域が独立に変動していることを念頭に,ある領域に大きな人工的なダンピングをかけるモデルも扱った。 モデルは線形バランスモデルで,鉛直方向は1000hPaから3hPaまでの18層に離散化され,水平方向はスペクトル法で離散化し,その解像度は波数15の三角形切断である。基本場はNCEP-NCAR再解析の1月長期平均である。 普通に計算すると,いわゆる環状モードが卓越する。対流圏と成層圏の両方に類似のパターンを持つ。大西洋域だけを取り出すと(太平洋域に大きなダンピングを入れると),対流圏では北大西洋振動パターン,成層圏では環状モードが卓越する。これはItoh and Harada(2004)の解析結果と一致する。一方,太平洋域だけを取り出すと,対流圏では北極付近を含む波列モード,成層圏では太平洋域を中心とする波数1パターンが卓越する。これは実測とは一致しない。 この計算には当然ながらパターンに影響を与えると考えられる総額規模擾乱の影響は含まれていない。従ってここから推測されることは,大西洋域では総観規模擾乱の影響は小さく,気候的平均場のもとでもっとも励起されやすいモードがほぼそのまま実測で現れているのに対し,太平洋域では総観規模擾乱の影響が大きく,これなしには低周波変動の卓越パターンを正しく模写することはできないということである。
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Research Products
(2 results)