Research Abstract |
福井県奥越地域に位置する経ヶ岳南西部には,経ヶ岳崩壊源,保月山崩壊源と呼ばれる馬蹄形の凹地が存在する.両崩壊源で発生した岩屑なだれは主に西〜南西に流下し,緩やかな斜面や塚原野台地と呼ばれる高まりを形成した.岩屑なだれ堆積面は,その地形的特長から崩壊源に近い上部では南六呂師北部面,中部面,南部面に,その西側では大矢谷面,小矢谷面に,南西側では伏石面,萩ヶ野面,森本面および塚原野面に区分できる. 調査の結果,約5万年間に5回の大規模な岩屑なだれの流下が明らかとなった.最も古い岩屑なだれは3.7〜4.6万年前(木片の^<14>C年代),保月山崩壊源から流下し,主に西へと広がり,大矢谷面まで到達した.次の岩屑なだれは3.1万年前(木片の^<14>C年代)に保月山崩壊源での再度の崩壊により発生し,その一部は西へ,また一部は南へ流下し,小矢谷面や伏石面を形成した.保月山崩壊源ではその後大きな崩壊はなく,以降の崩壊は経ヶ岳崩壊源へと移っていった.経ヶ岳崩壊源では2.5〜3万年前頃,大規模な崩壊が起こり,流下した岩屑なだれは塚原野台地を形成した.約2.1万年前(木片の^<14>C年代),経ヶ岳崩壊源で再度の崩壊が起こり,流れ出した岩屑なだれが萩ヶ野面を形成した.さらに5590〜5990年前(^<14>C暦補正年代)前には再々度の崩壊が発生し,岩屑なだれはまっすぐ南西に流下し,森本面を形成した. これらの大規模崩壊地の近傍には中部地方の右横ずれ断層系に属する活断層群が北東-南西方向に横切っている.このうち経ヶ岳南方の木落断層では5000〜6000年前頃に活動したことが明らかとなっており,経ヶ岳の最後の崩壊はこの断層活動が引き金になった可能性がある.
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