2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16550006
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
若狭 雅信 埼玉大学, 理学部, 助教授 (40202410)
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Keywords | 磁場効果 / パルスマグネット / 化学反応 / 過渡吸収 / レーザー光分解 / 緩和機構 / Δg機構 / ラジカル対 |
Research Abstract |
磁場効果の原因であるスピン変換過程に対する磁場効果を,50T超強磁場下で直接観測することを目的として,パルスマグネットの開発,パルスマグネットとナノ秒過渡吸収装置を組み合わせた超強磁場過渡吸収測定装置の開発,さらにそれを用いた化学反応の磁場効果の研究を行った。 まず,従来のパルスマグネットより高磁場を発生させるために,室温磁場空間が小さい(内径20mm)のビッター型パルスマグネットを作成した。このパルスマグネットと125kJコンデンサバンクを用いて,32.5Tの磁場を発生させることに成功した。次に超強磁場下で高精度にナノ秒・ピコ秒過渡吸収を測定できる装置を開発した。 開発した装置を用いてp-アミノフェニジスルフィドのSDSミセル溶液中での三重項増感分解反応に対する,超強磁場効果を研究した。本反応について30Tで過渡吸収を測定したところ,生成するp-アミノフェニレチイルラジカルの減衰は,ゼロ磁場より加速され,散逸ラジカル収量が約10%減少した。こうした磁場効果は従来の緩和機構では説明できず,超強磁場下における新しい磁場効果として注目できる。可能な定性的な説明としては,次のようになる。本反応で生成するp-アミノフェニルチイルラジカルは重原子である硫黄のラジカルなので,電子スピンは硫黄原子上に局在化し,芳香環やアミノ基に流れない。さらに,ほとんどの硫黄原子(^<32>S(95.02%),^<34>S(4.21%))は核スピンをもたい。よって,超微細相互作用が小さく,ゼロ磁場での三重項ラジカル対と一重項ラジカル対間のスピン変換が比較的遅いと予想される。ところが高磁場では超微細相互作用によるスピン変換以外に,緩和によるT_<±1>とSのスピン変換が加速されたために,三重項ラジカル対が効率よく一重項ラジカル対に変換し再結合するので,結果として三重項ラジカル対からの散逸ラジカル収量が減ったものと解釈できる。
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Research Products
(2 results)