2005 Fiscal Year Annual Research Report
ブルーシフトする弱い水素結合C-H…Oがミセル水溶液で果たす役割の研究
Project/Area Number |
16550010
|
Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
水野 和子 福井大学, 工学部, 助教授 (10126641)
|
Keywords | エチレンオキシド鎖の水和機構 / CH基の水和機構 / C-H…O相互作用 / 強・弱を含む二官能基的水素結 / 水の水素結合強度の低下 / C-H伸縮バンドのブルーシフト / 疎水性効果による構造化の否定 / 水分子の二官能基的水素結合 |
Research Abstract |
エチレンオキシド鎖が親水性基として作用しているメカニズムの解明 H16年度に行ったCH_3OCH_2CH_2OCH_3と水との赤外およびラマン分光法による研究に続いて,CH_3-(OCH_2CH_2O)_2-CH_3,CH_3-(OCH_2CH_2O)_4CH_3,HOCH_2CH_2OH,と水の2成分水溶液中のCH基の水和と,水の水素結合の強さを調べた.その結果どれも,水濃度の増加に連れて,1)C-H伸縮振動バンドの高波数側シフトと,2)吸収強度の減少が観測された.また溶質のモル分率が0.05までの低い濃度領域で水の分極が普通の水の分極よりも大きくなり,さらに溶質の濃度が高くなるのにつれて,逆に水分子の分極が小さくなり,水の水素結合が弱くなることがわかった.これらのことから,低い溶質濃度での水分子の分極の増加は,水とエーテル酸素との水素結合が,水-水分子間の水素結合よりも強いことにより,C-H基と水との相互作用をふくむ水和クラスターが形成されているためと考えられる.疎水性基の近傍にあるために構造化するのではない.溶質が増えるにつれてこのC-H基と水との相互作用はふえるはずである.C-H伸縮振動バンドの高波数シフトと吸収強度の減少は,CH基の水和が,C-H…OH_2で示される,弱い(blue-shifting)水素結合に起因すると考えることができる.これをサポートするab initio MO法による計算結果も得た. 調べた溶質と水とはどれも全濃度領域で混合し,分離することがない.これは水分子とCH基が共存可能であり,エーテル酸素がこのための重要な役割を果たしていると考えざるを得ない.すなわち,C-H…O(H)H…O<で表されるような水分子による二官能基的水素結合がエチレンオキシド基の水和に寄与していると結論できる.いわゆる疎水性効果による水の構造化機構を否定する研究結果が得られた.
|