2004 Fiscal Year Annual Research Report
均一触媒反応による星間分子生成の可能性の分子軌道論的探求
Project/Area Number |
16550011
|
Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
相原 惇一 静岡大学, 理学部, 教授 (40001838)
|
Keywords | 星間分子生成反応 / 星間分子 / 触媒反応 / PAH陽イオン / ナフタレン陽イオン / ナフタレニウムイオン / 密度汎関数法 / 分子軌道法 |
Research Abstract |
われわれは以前に、密度汎関数法B3LYPを用いて、多環式芳香族炭化水素(Polycyclic AromaticHydrocarbon ; PAH)の陽イオンラジカルが触媒となって、ほとんど活性化エネルギーを必要とせずに、2個の水素原子から1個の水素分子が生成することを見いだした。ところがその後、B3LYPが水素原子移動反応の遷移状態の活性化エネルギーを著しく過小評価することが判明し、その欠点を補うべく、B3LYPとは別個にMP2の計算を行い、両者で得られたエネルギーと分子構造を平均することにより、より正確な情報を得たが、この方法によってもPAH陽イオンは極低温でも水素分子生成反応の触媒となりうることを確認した。次にこの水素分子生成反応からの類推から、メタンや水のような典型的な星間分子が生成する際に、最終段階の水素原子付加がPAH陽イオンを触媒として進行することが考えられる。それを確かめるために、PAH陽イオンのモデル分子としてナフタレン陽イオンを取り上げ、その水素付加体(ナフタレニウムイオン)とCH_3、OH、C_2H、NH_2、CNなどのラジカルが反応して、メタンCH_4、水H_2O、アセチレンHCCH、アンモニアNH_3、シアン化水素HCN、イソシアン化水素HNCなどが生成する反応をB3LYPとMP2を用いて追跡したところ、いずれの反応も数kcal/mol以下の活性化エネルギーで進行することがわかった。最近開発された密度汎関数法KMLYPを用いてこれらの反応を再追跡したが、この結論は十分正しいと思われる。これまで、星間分子は主としてイオン・分子反応によって進行すると考えられてきたが、本研究によって、PAH陽イオンのような多原子分子を触媒とする反応が関与している可能性も十分考えられる。
|