2004 Fiscal Year Annual Research Report
高周期14族元素芳香族化合物の合成、構造及び反応性に関する研究
Project/Area Number |
16550028
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
一戸 雅聡 筑波大学, 大学院・数理物質科学研究科, 助教授 (90271858)
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Keywords | 高周期14族元素 / 高周期14族元素芳香族化学種 / 高周期14族元素カチオン種 |
Research Abstract |
著者らはこれまでにトリ-tert-ブチルシリル基を置換基とするゲルマニウム不飽和3員環化合物「シクロトリゲルメン」の酸化的脱シリル化反応により、2π電子系芳香族化合物であるシクロプロペニリウムイオンのゲルマニウム類縁体の合成に成功している。一方で、ジ-tert-ブチルメチルシリル基を置換基とするケイ素不飽和3員環化合物「シクロトリシレン」の酸化反応では望む脱シリル化反応が進行しないことを明らかにしていた。本研究では、シリル置換シクロトリシレンを再設計、合成、及びシクロプロペニリウムイオンのケイ素類縁体「シクロトリシレニリウムイオン」の合成を検討した。 著者らが開発したジリチオシランを活用することで、ケイ素=ケイ素二重結合上により嵩高いトリ-tert-ブチルシリル基を導入した新規なシクロトリシレンを合成できることを見出した。得られた新規なシクロトリシレンをトリチルカチオンで酸化することにより飽和ケイ素上の一つのシリル基の脱離が進行し、目的とするシクロトリシレニリウムイオンの合成、X線結晶構造解析による分子構造の決定にも成功した。シクロトリシレニリウムイオンは、溶媒や対アニオンとの相互作用のないフリーなケイ素カチオン種であり、ほぼ正三角形のケイ素3員環骨格を持ち、陽電荷が非局在化した2π電子系芳香族化学種であることを実験的に明らかにした。 一方、既に合成に成功しているジハロ置換シクロブテン高周期元素類縁体のカリウムグラファイトを用いた還元反応により、シクロブタジエンジアニオン高周期14族元素類縁体をジカリウム塩として合成することも成功した。X線結晶構造解析で決定したシクロブタジエンジアニオン高周期14族元素類縁体は大きく折れ曲がった4員環骨格を持ち、その上下にカリウムが位置した非芳香族化合物であることを明らかにした。
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