2005 Fiscal Year Annual Research Report
脂質二分子膜を反応場とする光誘起電子移動反応の機構と高効率化に関する研究
Project/Area Number |
16550030
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
村田 滋 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助教授 (40192447)
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Keywords | 光誘起電子移動反応 / 脂質二分子膜 / ピレン誘導体 / 光エネルギー変換 / ベシクル |
Research Abstract |
水中においてリン脂質分子が形成する球状二分子膜(ベシクル)を反応場として、疎水場に取り込ませたピレン誘導体に光照射することによって、内水相に封じ込めた電子供与体から、外水相に添加した電子受容体への方向性をもった電子輸送反応が進行する。本研究は、この反応の機構解明と電子輸送効率の向上を目的とするものである。今年度は、(1)ピレンガルボン酸を基本骨格とする新規増感剤の合成とその評価、(2)反応場を形成するリン脂質の構造に対する電子輸送効率の依存性、(3)内水相に封じ込める電子供与体の最適化、の三点について詳細な検討を行い、それぞれ重要な知見を得た。まず、ピレンカルボン酸はピレン骨格とカルボニル基の共役によって吸収極大が長波長側に移動しており、これまで増感剤として使用していたアルキルピレン誘導体と比較して照射光を効率よく吸収することが期待される。実際に、ピレンカルボン酸に二分子膜界面に固定するための親水性置換基を結合させた新規化合物を合成したところ、この化合物では、アルキルピレンを増感剤に用いた場合と比較して、照射光の吸収量は5倍以上となり、これによって電子輸送速度も3倍程度増大することが判明した。第二の点については、反応場を形成させるリン脂質分子として、鎖長の異なる飽和、あるいは不飽和アルキル側鎖をもつ数種類の脂質分子を選び、リン脂質分子の構造と電子輸送効率の関係を調べた。その結果、側鎖における不飽和結合の存在は電子輸送効率の向上に特に大きな効果を与えるものではないこと、さらに電子輸送効率は主としてアルキル基の鎖長によって支配されること、が明らかになった。第三の点については、アスコルビン酸をはじめとする可逆的な酸化還元反応を行う化合物に加えて、EDTAなどの犠牲試薬を含む数種類の電子供与性物質について、この電子輸送反応における電子供与体としての有効性を検討した。今年度の研究によって得られた成果は、いずれも、ベシクルを反応場とする高効率的な光-化学エネルギー変換システムの構築のために有用な知見を与えるものである。
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Research Products
(2 results)