2006 Fiscal Year Annual Research Report
脂質二分子膜を反応場とする光誘起電子移動反応の機構と高効率化に関する研究
Project/Area Number |
16550030
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
村田 滋 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教授 (40192447)
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Keywords | 光誘起電子移動反応 / 脂質二分子膜 / ピレン誘導体 / ペリレン誘導体 / 光エネルギー変換 / ベシクル |
Research Abstract |
水中においてリン脂質が形成する球状二分子膜(ベシクル)の疎水場に取り込ませたピレン誘導体を増感剤として、内水相に封じ込めた電子受容体から外水相に添加した電子供与体への、正の自由エネルギー変化をもつ電子移動反応を光化学的に起こすことができる。本研究は、その機構解明と高効率化を目的としたものである。今年度は、内水相に封じ込めた電子受容体の電子移動反応効率に及ぼす効果、および可視光を利用するための増感剤の設計と評価、について詳細な検討を行った。第一の点については、生体反応を参考に十数種におよぶ電子供与性物質を選択し、ベシクルを反応場とする電子移動反応の電子供与体としての有効性を評価した。その結果、アスコルビン酸を上回る電子移動効率を示すものとして、システインを見いだすことができた。また、この反応における電子供与体の効果を解析したところ、電子供与体の電子的性質は、内水相側の増感剤の消光過程よりも逆電子移動反応過程に大きく現れることが判明した。また、第二の点については、可視光を吸収する増感剤として新たにペリレン誘導体に注目した。ピレン誘導体を用いた際に得られた知見をもとに、ベシクルを反応場とする電子移動反応の増感剤として機能するために必要な分子設計を行い、長鎖アルキル基と極性置換基を併せもつ新たなペリレン誘導体の合成を行った。さらに、この化合物の電子移動反応の増感剤としての有用性を調べたところ、確かに可視光を用いた電子移動反応の増感剤として機能することが確認された。この結果は、さらなる分子設計と反応系の最適化を行うことにより、この電子移動反応システムが太陽光を用いて駆動できることを示唆している。今年度の研究によって得られた成果は、いずれも、ベシクルを反応場とする光一化学エネルギー変換システムの構築のために、有用な知見を与えるものである。
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Research Products
(3 results)