Research Abstract |
21世紀において,環境破壊など負の作用を伴わず,自然界に適合した人類の発展のためには,新概念に基づく革新的「ものづくり」手法の確立が急務である。特に,任意の立体化学を有する光学活性化合物の効率的合成法の開発は,医薬,農薬,液晶などの有用物質合成において重要な課題である。本研究では,構成する原子全てが生成物に含まれることからアトムエコノミーの点で非常に優れた不斉付加環化反応の革新を目的に,両鏡像体ともに入手可能な酒石酸エステル由来の複核キラル反応場において高効率的な各種エナンチオ選択的付加環化反応の実現を試み,以下の成果を挙げた。 1.ニトロンとアセチレンと段階的付加環化反応 酒石酸エステルのメチル亜鉛塩を活用する複核キラル反応場設計により,ニトロンへの亜鉛アセチリドの不斉求核付加反応により,対応する光学活性N-(プロパルギル)ヒドロキシルアミンが得られ,さらに反応中間体をそのまま昇温すると,分子内環化反応が引き続き進行し,対応する4-イソオキサゾリンが生成することを明らかにした。この反応では,添加剤を加えると光学純度が飛躍的に向上するという新奇な不斉増幅を観察することができた。さらに,触媒的な系に展開も可能であるという知見も得ることができた。 2.アミド置換基を有するニトロンの不斉1,3-双極子付加環化反応 不斉源として酒石酸ジイソプロピルを用い,嵩高いジイソプロピルアミド置換基を有するニトロンの2-プロペン-1-オールへの不斉1,3-双極子付加環化反応が高エナンチオ選択的に進行することを見出していたが,窒素上の置換基が脱保護が困難なフェニル基であるという問題があった。今回,p-メトキシフェニル基を有するニトロンを用いて検討した結果,脱保護が可能となり,(2S,4R)-4-hydroxyornithine前駆体合成へ応用し,好結果を得た。
|