2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16550056
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
野崎 浩一 大阪大学, 理学研究科, 助手 (20212128)
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Keywords | MLCT / リン光 / dd / イリジウム錯体 / ルテニウム錯体 / ゼロ磁場分裂 / 有機EL / 無輻射失活 |
Research Abstract |
強いリン光性をもつ遷移金属錯体は有機ELなど次世代の表示デバイスや各種光センサー材料として最近注目されている。これらの化合物のリン光強度や寿命などの光物性を理論予測することは、これらの錯体の分子設計に非常に有用であると考えられる。本課題研究では、遷移金属錯体の発光スペクトル、燐光輻射速度、無輻射失活速度などの性質の理論予測を検討してきた。今年度はリン光性をもつMLCT状態の短寿命化の主な原因であるdd状態経由の熱的失活過程を理解するために、長寿命のMLCTリン光を示すことで知られているRu(bpy)3と、dd経由の失活が非常に速いRu(tpy)2についての最低三重項状態についてのポテンシャルエネルギー曲面を計算した。この曲面からMLCTの失活過程でどのような構造変化が起こるか、あるいはどの段階が律速過程かについて研究した。これまでの20年以上に渡る研究の結果、Ru(bpy)3の熱的失活の律速段階はMLCT→ddの段階にあり、Ru(tpy)2についてはdd→GSへのトンネル失活であるとされてきた。ところが、Ru(bpy)3についてのDFT計算の結果では、MLCT→ddの段階のエネルギー障壁はかなり小さく、むしろdd→GSのエネルギー障壁の方が実測の活性化エネルギーに近いことが明らかになった。また、Ru(bpy)3とRu(tpy)2との大きな寿命の相違はMLCT→ddの段階にあるのではなく、dd→GSのエネルギー障壁の大きさに起因することも明らかになった。これらの計算結果は、現時点でのdd経由の熱的失活メカニズムについての考え方と異なったものであり、今後実験的に再検討する必要がある。 本研究で開発した計算手法によって、dd経由の熱的失活が起こりやすいか否かについての情報を分子構造から予見でき、高い発光量子収率をもつ錯体の設計に役立つと期待できる。
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Research Products
(3 results)