Research Abstract |
本研究では,シリカ表面に吸着させた逆ミセル(以下,これを吸着逆ミセルと称す)の界面場を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)の固定相とする新規なLC分離法の開発をめざしている。吸着ナノ界面場の設計や制御において考慮すべき主な因子に関する初年度の基礎的検討によって得た知見をもとに,平成17年度にはLC分離への応用を目的として,以下のような研究成果を得た。 シリカ表面に陽イオン性界面活性剤であるセチルトリメチルアンモニウムの逆ミセルを接触させると,その内側の水相を介して界面活性剤相が吸着するという現象によって生じる吸着逆ミセルを新規な固定相とするHPLCの開発を目指して,有機化合物の幾何異性体の順相HPLC分離について検討した。カラムに充填したシリカゲルに逆ミセルを吸着させ,これを固定相として用いてジメトキシベンゼン及びニトロアニソールのo-,m-,p-異性体のHPLC分離挙動を調べた結果,1)固定相としてシリカゲルのみを用いた場合と比較して,シラノール基との水素結合に起因すると考えられている幾何異性体の分離能は維持されるが,その相互作用の強さが界面活性剤相の被覆によって軽減され,保持時間が短縮されること,2)そのため短時間での分離が可能になること,3)固定相,特にその内水相が安定に保たれるため保持時間の再現性が向上すること,4)界面活性剤相に対する内水相の比率を変えることによって保持時間の制御が可能となることを明らかにした。 上記4)のような特性が発現する原因として,逆ミセル内水相の比率を下げると,水和が減少するため界面活性剤相の極性基は双極子間の相互作用によって有機化合物の保持を増大させる一方,その比率を上げると,極性基への水和が増すため,内水相の水との水素結合による相互作用が保持の主因になると推測した。 なお,上記の研究成果に関する論文を現在投稿準備中である。
|