Research Abstract |
要素(分子)間相互作用の設計に基づく自己組織化材料の研究は,ほしい時にほしい機能の発現を可能にする機能プログラムド分子システムの創製に資する知見を与える。本年度は,1)「アキラルな分子の不斉誘起」と「自己組織化に基づくキラル応答空間の創出」;2)ボロン酸を用いた自己組織型センサー,を取り組んだ。 1)「柔構造分子への不斉誘導」および「自己組織化に基づくキラル応答空間の創出」 クラウンエーテル類は金属イオン類と錯体形成時にさまざまな配位モチーフを発現する。それを「形の制御」部位に活用するいくつかの機能性ポルフィリンの合成をおこなった。ジアザ-ジベンゾ-30-クラウン-10を架橋部位にもつビスポルフィリンは,カリウムイオンの添加に伴い"U"字型のビスポルフィリン反応場を形成する。そこで,両親媒性オリゴエチレングリコールを導入した関連体(1)を新規に合成し,液(1 in CH_2Cl_2)-液(アミノ酸 in 1N KOH水溶液)において,アミノ酸のキラルセンシングをおこなったところ,そのアミノ酸の不斉に相関した円二色性(CD)スペクトルを観測した。一方,自己組織化に基づくキラル応答空間の創出において次の実験をおこなった。すなわち,12-クラウン-5共役型亜鉛ポルフィリン(2)単独では,溶液中でキラルジアミン類を添加してもCD不活性である。しかしながら,カリウムイオンの添加はCD活性を導いた。これはカリウムイオンとそのジアミンが協働的に作用した結果,2の自己組織化を導いたものと考察した。この知見は自己組織型キラルセンシングの方法論を与える(特願2006-41991)。 2)自己組織型分子センサー 要素間相互作用の設計と制御にもとづく機能プログラミングの概念は,自己組織型分子センサーシステムの構築に有効である。われわれは,ピロカテコール部位をもつアリザリン系色素の光学特性(色調・蛍光)が,フェニルボロン酸と可逆的なボロネートエステル構造を形成すると劇的に変化する性質に着目して,自己組織型の金属イオンセンサー(J.Mater.Chem.,2005,15,2889-2895)やアニオンセンサー(Chem.Commun.,2005,2846-2848)を提案した。しかし,ボロネートエステル化を用いるアニオン認識において,水酸化物イオンが妨害化学種となる結果,直接水系媒質での適用ができないという欠点があった。そこで,分子内で効果的なB-N相互作用を発現するo-アミノメチルボロン酸(3)とアリザリンを組み合わせて,H_2O-MeOH(1:4w/w)中,そのpH依存性測定したところ,pH5-8の範囲で,アリザリンは3とボロネートエステル体を形成して蛍光発光した。われわれは,そのpH依存性をアニオンの存在・非存在下で検討した結果,F^-存在下,pH5.5において選択的な蛍光消光を観測した。このように水系媒質で機能する自己組織型アニオンセンシングを提案することができた(論文準備中)。
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