2004 Fiscal Year Annual Research Report
立体特異的フォトクロミック反応を行うチオフェノファン-1-エン類の開発
Project/Area Number |
16550126
|
Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
竹下 道範 佐賀大学, 理工学部, 助教授 (40274534)
|
Keywords | フォトクロミズム / シクロファン / 量子収率 / 光メモリー材料 / 調光材料 / 旋光度 / 立体特異的反応 / 屈折率 |
Research Abstract |
本年は、立体特異的フォトクロミック反応を行うチオフェノファン-1-エン類の分子設計、及び合成を行った。ジチエニルエテンをベンゼン環で架橋した大環状チオフェノファン-1-エン類は、架橋するベンゼン環の位置によって、光異性体である閉環体の熱安定性及び量子収率が劇的に変化した。これは、ほぼ同じ吸収スペクトル変化を行いながらも環の大きさによって熱安定性・量子収率が変化できる画期的なフォトクロミック化合物であると考えられる。即ち、この大環状チオフェノファン-1-エン類を用いることによって、閉環体が熱不安定なものからは、フォトクロミックサングラスのような調光材料へ、また、閉環体が熱安定なものからは、光メモリー材料へと応用可能である。一方、量子収率については、最も高いもので0.5を超えるなど、現在フォトクロミック化合物開発の主流である、ジチエニルエテン化合物を超えるものの開発に成功した。高い量子収率は、高感度化に必要不可欠な要素なので、本年度は、熱安定な、高感度な光メモリー材料の開発に成功したと言える。一方、小環状チオフェノファシ-1-エン類の分子設計及び合成も並行して検討した。小環状チオフェノファンは、その大きな歪みより、着色体(閉環体)が無色体(開環体)よりも熱安定であることが、化学計算によって予想された。分子の歪みが大きいため、合成には手こずっており、現在、目的化合物の2段階前の前駆体まで合成を行ったところである。大環状、小環状チオフェノファン-1-エンは共に旋光度変化による非破壊読み出し性、屈折率変化による光導波路の検討などに期待ができる化合物である。
|