2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16550129
|
Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
幅田 揚一 東邦大学, 理学部, 助教授 (40218524)
|
Keywords | Ag^+イオン / サイクレン / 芳香環 / ホスト-ゲスト / 包接 / Ag-π相互作用 / 超分子 |
Research Abstract |
フッ素,メトキシ,メチル,ニトロ,シンナモイル基などを置換基として導入した芳香環側鎖を4枚持つアームドサイクレン(食虫植物型超分子)をサイクレンと芳香族アルデヒドとの還元的アミノ化反応によって合成した. これらのAg^+イオンに対する挙動を低温CCD-X線結晶構造解析によって検討した.その結果,ベンジルタイプの芳香環を有する化合物のAg^+錯体すべてにおいて,4枚の芳香環側鎖がAg^+イオンを包み込むような構造をとることがわかった.Ag^+と最も近い芳香環側鎖の炭素の距離は約3Åであり,Ag-芳香環の間に相互作用があることがわかった. また溶液中の挙動を^1H-NMRスペクトルを使った滴定実験によって検討を行ったところ,芳香環に導入した置換基の電子供与性/電子求引性によって顕著に芳香環側鎖のプロトンシグナルがシフトすることを見いだした.すなわち,メチル基などの電子供与性の置換基を導入した化合物では大きいものでは約1ppmほど芳香環シグナルが高磁場側にシフトし,一方,ニトロ基のような電子吸引性の置換基を導入した化合物では芳香環シグナルがほとんどシフトしなかった. 次にAg^+イオンと芳香環側鎖の直接的な相互作用を見るために,UV-VISスペクトルを使った滴定実験を行った.その結果,すべての場合において吸収極大が増大し,その位置と吸光度の変化の大きさは置換基の種類ならびに置換位置によって異なることがわかった. 結晶構造を使ってAg^+錯体のHOMOとLUMOを計算したところ,LUMO(Ag^+の5s軌道)が明らかに変型して側鎖の芳香環のHOMOと相互作用しており,各種実験データをサポートする結果が得られた. 現在,これらの挙動がAg^+イオンに特有なものなのかどうか,鋭意検討を進めている.
|