2005 Fiscal Year Annual Research Report
ペプチドらせん骨格における不斉情報の伝達と増幅機構の解明
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16550142
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
稲井 嘉人 名古屋工業大学, 大学院・工学研究科, 助教授 (60223210)
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Keywords | キラリティ / ペプチド / らせん構造 / デヒドロアミノ酸 / 円二色性 / 計算機化学 / 不斉誘導 / らせんの巻き方向 |
Research Abstract |
本研究で得られた知見の主要点を以下に示す。幾つかの研究は前年度から引き続いて行ったものである。 (A)キラル単位かららせん鎖への不斉情報の伝達 (i)非共有結合型キラル相互作用 芳香族側鎖を有するデヒドロアミノ酸残基を含むペプチドについて、キラル分子を添加した時の円二色性(CD)測定を行った。これらのN末端フリーペプチドはキラル添加剤によってCDシグナルを発現し、片方のらせんを優先的に誘起する傾向を持つ。アミノ酸シーケンスが異なる幾つかのペプチドについてもキラル単位からの不斉伝達が観測できた。また、錯体構造の推定やCDスペクトルの予測を分子軌道法を用いて行い、有用な知見を得ることができた。 (ii)共有結合型キラル相互作用 アキラルシーケンスの特定の位置にキラル単位を1つあるいは末端に複数組み込んだペプチドのCDスペクトルを様々な溶媒中で測定した。シーケンスや溶媒の性質がペプチドのキラリティに大きく影響することが明らかとなった。特定のペプチドでは、キラル分子の共存下温度を変化させた時、その巻き方向の優先性が影響を受ける結果を得た。 (B)らせん鎖間の不斉情報の伝達 ヘリックス形成性のキラルオリゴペプチドによるアキラルペプチドの不斉誘導に成功した。また、ヘリックス-ヘリックス鎖間の不斉誘導は末端の化学構造によって影響を受けることが分かった。より短いペプチド鎖についても会合による不斉相互作用を観測することができた。 (C)らせん集合体における不斉情報の伝達・増幅 末端に親水性基を有するペプチドの合成を行い、キラル添加剤との相互作用について調べた。また、2本のペプチド鎖を導入した分子についてもそのキラリティや外部刺激の影響に関する研究に着手できた。 以上、ペプチドらせん鎖上の不斉情報の伝播について有用な知見を得ることができた。現時点で本課題に関連した論文として、次項に挙げたもの以外に印刷中のものが1編がある。他の幾つかの研究結果についても追って公表をしていく予定である。
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Research Products
(1 results)