Research Abstract |
本課題の目的は,MEMSの強度設計を行うとともにその健全性を保証するため,疲労損傷を評価するシステムを構築することである.そのため,本研究では,原子間力顕微鏡(AFM)および背面電子回折(EBSP)法を用いる方法を提案した.AFMでは,疲労すべり帯によって生じた表面凹凸の量を測定することが可能であり,EBSP法では,結晶方位を同定することができる.両者を併用することによって,すべり方向のすべり量を測定することができ,それによって結晶金属材料の疲労損傷評価ができることを結晶性のバルク材について明らかにした.次に,AFMの一種である磁気力顕微鏡MFM,およびMIセンサーを用いて,オーステナイト系ステンレス鋼の疲労過程中のマルテンサイト変態量に伴う磁気特性の変化を検出することによって,疲労損傷を定量的に評価するための基礎的なデータを得た.また,高輝度放射光CT法によって,マイクロマテリアルの材料内部における疲労き裂損傷を評価するための技術を開発した.さらに,MEMS材料として有望視されているZr基バルク金属ガラスを用いて疲労試験を行った.その結果,大気中における疲労き裂伝ぱは繰返し数依存であり,1サイクルあたりのき裂伝ぱ速度と応力拡大係数範囲の関係は,繰返し速度および応力比に依存しないことが明らかになった.一方,3.5%食塩水中においては,時間依存のき裂伝ぱを示し,単位時間当たりのき裂伝ぱ速度は繰返し速度に依存せず,ほぼ一定であった.なお,き裂伝ぱ速度は応力拡大係数にほとんど依存せず一定であった.このことは,腐食環境中におけるき裂伝ぱが化学反応律速あるいは拡散律速であることを示している.次いで,光硬化樹脂およびそれをカーボンナノチューブで強化した長さ100μm,幅10μm,高さ10μm程度の微小片持ちはり試験片を製作し,曲げ疲労試験を行うための装置を完成させた.
|