2004 Fiscal Year Annual Research Report
生体吸収性複合材料のナノ構造と破壊特性に関する研究
Project/Area Number |
16560074
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
東藤 貢 九州大学, 応用力学研究所, 助教授 (80274538)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
新川 和夫 九州大学, 応用力学研究所, 教授 (00151150)
竹之下 康治 九州大学, 大学院・歯学研究院, 助教授 (50117157)
|
Keywords | 生体吸収性 / ポリL乳酸 / ヒドロキシアパタイト / ポリカプロラクトン / ナノ構造 / 破壊靭性 / ポリマーブレンド |
Research Abstract |
平成16年度の研究では,骨の主成分であり生体親和性に優れるハイドロキシアパタイト(HA)と,植物のデンプンから抽出した乳酸を高分子化し生体適合性に優れるポリL乳酸(PLLA)の複合材料,およびPLLAと生体適合性高分子材料であるポリカプロラクトン(PCL)のブレンドを作製し,破壊特性について調べた.得られた結果は以下の通りである. (1)HA/PLLAの破壊特性に及ぼすHA粒子形状の影響を調べた.4種類の粒子形状(ナノ,マイクロ,球状,板状)について調べた結果,マイクロ粒子(粒径5μm程度)が最も優れた破壊特性を示した.ナノ粒子や球状粒子は脆性的な破壊挙動を示し破壊靱性も低い結果となった. (2)マイクロ粒子分散型HA/PLLAの破壊メカニズムは,クラック先端の応力集中部で粒子とマトリックス界面の剥離が生じ空隙が形成される.その空隙の周囲で局所的な応力集中が発生し,PLLAマトリックスの延性変形が生じる.このような延性変形のためにナノや粒状粒子に比べ応力緩和やエネルギー散逸が大きくなり破壊靭性もより高くなると推測される. (3)HA/PLLAの破壊特性には成形加工法の影響が強く現われる.混練機を用いてHA粒子とPLLAを加熱混合するときに長時間混合するとPLLAの熱分解により破壊特性は大きく低下する.また,短時間すぎると粒子の分散状態が不均一となる.混合時間と回転速度の影響を調べた結果,50rpmの回転速度で20分間の混合時間が最適であることがわかった. (4)PLLA/PCLポリマーブレンドを作製し力学・破壊特性に及ぼすブレンド比の影響について調べた.その結果,PLLA : PCL=85 : 15のときに曲げ破壊エネルギーと破壊靭性は最大となった.PLLAとPCLは基本的に非相溶性であるため相分離を生じる.PCLの一部は球晶となり残りの部分はPLLAと絡み合う構造をとる.このときPLLAとPCLは直径が約100nm程度の分子束状で絡み合いマトリックスを形成し,そのマトリックス中にPCLの球晶が分散する構造を成す.この球晶周辺での局所的応力集中によりマトリックスが延性変形を示すために大きな破壊エネルギーを示す. 次年度は今回得られた知見を基にHA/PLLA/PCLの3成分系複合材料を試作し,破壊特性について検討する予定である.
|
Research Products
(4 results)