Research Abstract |
本研究では,高度な技術,高品質,短納期などが要求される単品鋳物製品の製造工程を取り上げ,その際に必要となる形式知と暗黙知とを連携して設計・製造知識を伝承し,さらに新たな高付加価値製品の製造知識を創出する没入型仮想共有環境システムにおける力覚呈示装置を開発した.本研究で開発した可搬型仮想共有環境システムは,3次元可視化装置と力覚呈示装置を組み合わせ,ユーザが3次元仮想物体の重さなどを体験できるものである.仮想共有環境内に表示された映像を,視覚のみならず触覚や力覚を体験化することで,鋳造にかかわる知識の内面化が促進される.3次元立体視装置への3次元形状の表示と力覚呈示装置への制御入力はPCで統合的に行われ,3次元立体視映像と力覚を同期する.3Dメガネに取り付けられたヘッドトラッキング装置により視点位置がPCにフィードバックされ,視点位置に応じた映像をリアルタイムに表示するとともに,力覚呈示装置では,マニピュレータ先端の位置とマニピュレータへの負荷をPCにフィードバックし,さらに呈示されている3次元形状を考慮してマニピュレータの位置や力を適切に制御する.例えば,鋳造における突き固め工程では,金枠の中に鋳砂を注入しながら,突き棒によって鋳砂がムラがなく行き渡るように突き固める.このような工程で獲得すべき知識は視覚的なものだけでなく,突き棒で突く感覚が重要である.本仮想共有環境システムを利用する場合は,3次元立体視映像とともに力覚呈示装置により突き固め工程における感覚が呈示され,また,実際に製品製造を行うわけではないため,何度でも体験することが可能である.また,熟練技能者の作業データを予め計測し,そのデータについて力覚呈示装置を介して教示することにより,熟練技能者の作業内容を体験することができる,このような力覚に関わるデータを教示することで,直接的に暗黙知を獲得することが可能となった.
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