Research Abstract |
自然冷媒である二酸化炭素を用いた冷凍サイクルにおいて,圧縮/膨張ユニットを組み込んで絞り損失を回収することによりエネルギー効率向上を図る試みとして,今年度はベーン形膨張機の性能改善と膨張機による圧縮機の駆動,膨張機内漏れ流れの検討,スクロール形膨張機の試作を行った. ベーン形膨張機に関しては,ベーン背部空間に油分離器により油混合率を高めた冷媒を供給することにより漏れを低減することができ,その全効率は約60%まで向上した.一方,膨張機で得られた回収動力の利用形態として,中間冷却を利用することができる二段圧縮サイクルに注目し,膨張機と2段目の圧縮機が一体となる圧縮/膨張一体形機を試作し,その運転特性を実験により調べた.試作した一体形機は膨張機側の性能が低く,そのままでは運転することができなかったが,膨張機側に付加的な流量を供給することにより一体形機を運転することができ,一体形機において0.8MPaの圧縮がなされた.一体形機は膨張機側と圧縮機側の流量と軸トルクが釣り合う点で運転されるが,運転バランス点は,膨張機と圧縮機それぞれの性能特性を考慮することにより理論的に求められることがわかった. 膨張機の性能は内部漏れにより大きく影響を受けるため,膨張機内で発生する遷移臨界漏れ流れについてモデル実験を行い,油の混入も考慮した理論解析モデルの検証を行った.その結果,狭い隙間における漏れ流量は,入り口加速,流路中の摩擦損失および加速損失を考慮することにより正確に見積もることができることがわかった.また,入り口における加速では,エンタルピー差に基づいて流速を計算すればよいことも示された.さらに,ベーン形以外の膨張機として,スクロール形膨張機を試作し,その性能を測定した.試作器の性能はベーン形膨張機に及ばなかったが,旋回スクロールの背圧を最適化すれば良い効率が得られるであろうことが予測された.
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