2006 Fiscal Year Annual Research Report
加工性が良く高熱伝導なプラスチックを用いる冷凍機冷却型超伝導コイルの開発
Project/Area Number |
16560252
|
Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
高尾 智明 上智大学, 理工学部, 教授 (30245790)
|
Keywords | 超伝導コイル / 安定性 / 冷凍機冷却 / DFRP |
Research Abstract |
超伝導コイルは極低温において抵抗が零の超伝導状態になるため、これまで沸点が非常に低い液体(例えば、1気圧での沸点が4.2Kのヘリウム)にコイルを浸漬して冷却する方法が用いられてきている。それに対して、近年では冷凍機によるコイルの冷却が広がりつつある。利点の一つとしては、冷凍機冷却ではヘリウム等の極低温液体を使用しないため、液体に関する煩雑な作業が一切なくなることである。 一方で、超伝導コイルは冷凍機のコールドヘッドからの熱伝導のみによって冷却されるため、極低温液体により直接に浸漬冷却されるコイルよりも、冷却が悪い可能性がある。冷凍機冷却型の超伝導コイルの安定性において、コイル構造材料の熱伝導は非常に重要である。現在のところ、コイル巻線に接触して巻線を冷却する材料として窒化アルミが用いられている。窒化アルミは電気的に絶縁性がありながら高い熱伝導率を持つためである。しかし、窒化アルミは固くてもろい。そのため扱いには注意を要し、また比較的小規模な加工でも現場で行うことは難しい。 そこで、窒化アルミの代替材料としてダイニーマ繊維強化プラスチック(DFRP)を本研究にて提案する。DFRPはステンレス並みの熱伝導率を有し、多くの非金属および金属材料と同様に、実験現場レベルで切削や穴開け作業などが可能である。またダイニーマ繊維は、冷却するにつれて伸長する特異な性質を有する。この繊維を樹脂含浸して製造されるDFRPも、その特異な性質を維持している。DFRPをコイル構造材に用いれば、極低温への冷却過程で膨脹し、コイル巻線とDFRPの接触力が増加して、巻線からの良好な熱伝達も期待できる。 これを実証するため、DFRPを巻枠とする小型超伝導コイルを試作し、実際に冷凍機冷却してコイル安定性を実測した。比較のため、窒化アルミとガラス繊維強化プラスチック(GFRP)を巻枠とする同一諸元のコイルでも同様の測定を行った。その結果、コイル巻線張力が大きい条件では、DFRP巻枠のコイルは巻線からの熱伝達がよくなるため、窒化アルミを巻枠としたコイルとほぼ同等かそれ以上の安定性が得られた。 これらの結果より、DFRPは熱伝導率だけで比べれば窒化アルミに劣るものの、温度低下により膨脹するという特長を有するため、膨脹を生かせる構造材形状や巻線張力にすることにより、冷凍機冷却型の超伝導コイルの構造材料として使用できることが実験的に示された。DFRPの軽量で加工しやすいというメリットを考慮に入れると、状況に応じてAINに代わり実用性のある構造材料と考えられる。
|
Research Products
(3 results)