2006 Fiscal Year Annual Research Report
強磁性/反強磁性交換結合積層膜の開発とマイクロ波磁気デバイスへの適用に関する研究
Project/Area Number |
16560271
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
佐藤 敏郎 信州大学, 工学部, 教授 (50283239)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三浦 義正 信州大学, 工学部, 教授 (30362099)
山沢 清人 信州大学, 工学部, 教授 (50005477)
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Keywords | マイクロ波磁気デバイス / 強磁性共鳴 / 強磁性 / 反強磁性交換結合 / FeSi / MnIr |
Research Abstract |
本研究は高磁化強磁性薄膜/反強磁性薄膜交換結合による交換異方性を利用することで、強磁性共鳴周波数の高周波化と高い透磁率を両立する新しいマイクロ波磁性薄膜材料の開発を目標とするものである。最終年度である平成18年度は、交換結合磁性膜のマイクロ波磁気特性を詳細に検討して材料の設計指針を確立するとともに、デバイス作製時の熱履歴の問題を検討した。 (1)FeSi/MnIr交換結合磁性膜のマイクロ波磁気特性の解析 磁性薄膜材料を高周波デバイスに適用する際、強磁性共鳴の振舞はデバイスの諸特性に大きく影響する。FeSi/MnIr交換結合磁性膜の強磁性共鳴半値幅はFeSi膜厚に大きく依存することが実験的に明らかにされているが、その原因は明らかでなかった。今回、Landau-Lifshitz-Gilbert方程式を用いたマイクロマグネティックシミュレーションによって、FeSi/MnIr交換結合磁性膜のマイクロ波磁気特性の解析を行い、以下の重要な知見が得られた。 ・FeSiの交換スティフネスを一定とする解析では、実験結果を全く説明できない。そこで、FeSi結晶粒配向や格子欠陥などによって交換スティフネスが分布を持つと仮定した「交換ステフィネス分散モデル」を新規に導入して数値シミュレーションした結果、実験事実を忠実に再現できることを明らかにした。 ・交換スティフネスの分布によって、FeSi内のルーズなスピン-スピン交換相互作用が存在するため、FeSi/MnIr界面の交換結合がFeSi中を伝播しにくくなり、交換バイアス磁界がFeSi膜中で分布する。この影響はFeSi膜厚が厚いほど顕著であり、強磁性共鳴半値幅が広くなる。 ・上記の知見にもとづいて、強磁性FeSi層膜厚の薄いFeSi/MnIr積層膜を作製し、共鳴半値幅の狭い急峻な強磁性共鳴吸収を持つことが立証され、低損失マイクロ波材料としての設計指針が示された。 (2)デバイス作製時の熱履歴の問題 FeSi/MnIr交換結合磁性膜を磁界中熱処理することによって交換バイアス磁界を増大できるが、強磁性共鳴周波数はむしろ低下する。詳細に検討した結果、成膜後のFeSiのintrinsicな一軸異方性磁界は磁歪-膜応力相互作用にともなう磁気弾性効果によるものであり、熱処理によって膜応力が開放され、intrinsic異方性磁界が大幅に低下するため、強磁性共鳴周波数の低下に繋がったと結論された。デバイス作製の際には、熱履歴は避けられず、FeSi膜のintrinsic異方性磁界の温度依存性を抑制するために、微細スリットを導入して形状磁気異方性を誘導する手法が有効であることを示した。今後は、以上の知見をもとに、デバイスの試作と評価を行っていく予定である。
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Research Products
(2 results)