Research Abstract |
無線LAN環境改善対策として用いられる電波吸収体は,これまでに壁材タイプを中心に多数の報告例があるが,これらの問題は室内の壁や窓ガラスにとどまらず,オフィス内の中央などで使用されるパーティションにおいても重要である.特に,電波が乱反射して影響を及ぼすといった恐れがあるが,パーティションなど室内に設置されたものに電波吸収機能を付加し,無線LANに対応した電波吸収体を検討した例は少ない. そこで,パーティションに電波吸収機能を付加することで,無線LANで使用される周波数帯域に対応したパーティションタイプ電波吸収体について検討した.本吸収体を提案するにあたり,パーティションという観点から透光性がポイントとなるが,これまでに実用例のある透明型吸収体は重量的な問題からパーティションへの適用には難がある.一方で,既存のパーティションに用いられるポリカ中空複層パネルは,透光性・軽量性・強度に優れるといったメリットが多いことから,このパネルに電波吸収機能を付加し,吸収体としての実現を目指した. 検討では,まず,着目したパネルがハニカム構造となっていることから,パネルの誘電率をどのように表現するかが重要であり,パネルの表現方法について3種類の方法で検討した.各方法の有効性を確認するため,パネルと抵抗皮膜による電波吸収体の吸収特性を比較し,自由空間透過法によりパネル全体の誘電率を求める方法が最も測定値に近くなることを確認した.この誘電率をもとに吸収特性の検討を行った結果,無線LANの使用周波数帯域である2.45GHzおよび5.2GHzにおいて,垂直入射で20dB以上,TE・TM両偏波および円偏波において,入射角度が5度から20度まで,15dB以上の吸収量が得られることを確認した.以上のことから,無線LAN用のパーティションタイプ電波吸収体の実現性を理論的かつ実験的に確認することができた.
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