Research Abstract |
昨年度垂直磁気記録方式を採用したハードディスクドライブ(HDD)が製品化され,今後のHDDは垂直磁気記録方式に切り替わっていくという背景に鑑み,本年度は主として垂直磁気記録用磁気転写の基礎検討を推進し,以下の成果を得た. まず第1に,拡大モデル実験によって垂直磁気転写特性を調べた.これまでの面内磁気転写の研究により,拡大モデル実験が有効であることが確認されているので,10倍程度の拡大モデル及び数万倍の拡大モデルを用いた.前者の拡大モデルにおいては,スレーブ媒体として斜め異方性媒体(蒸着テープ)を用いて,これの垂直磁化成分を利用した.後者の拡大モデルにおいては,スレーブ媒体としてメタル塗布型テープを用い,テープの長手方向を垂直媒体の垂直方向と見なした. 第2に,3次元有限要素法を用いた垂直磁気転写シミュレーションにより転写の基本特性を明らかにした.垂直HDDにおいては,トラックピッチも200nm以下になっているので,クロストラック方向の転写特性にも注目した.さらに,スレーブ媒体の転写状態を解明するためにLLG(ランダウ・リフシッツ・ギルバート)方程式を使ったマイクロマグネティックシミュレーションの検討も開始した. 以上,第1,第2の検討により,ビット長,マスター磁性層磁気特性,マスター突部形状,転写磁場印加方向と印加強度などが転写特性に及ぼす影響が明らかになった.本研究の成果は,学会,学術誌論文により公表した. 第3に,実際の垂直ハードディスク(HD)を用いた垂直磁気転写検討を実施した.市販されているシーゲート製HDを入手し,これに実際に磁気転写を行い,MFM(磁気力顕微鏡)により転写された磁化パターンを観察し,磁気転写が可能であることが確認できた.
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