Research Abstract |
利根川水系渡良瀬川礫床区間を調査対象として,交互砂州地形による低水路形成と低水路河床低下,比高差の拡大,ハリエンジュによる河道内樹林化と言った近年の礫床河川の河相変質を抽出した.まず,横断面内植生分布と冠水流量の関係,移動限界礫径を指標とした洪水撹乱規模評価,洪水前後での植生変化から,洪水と河原環境の変遷を考察した.これらから,表層河床材料の80%以上が移動限界を超える洪水撹乱規模が生じても河原が維持される場合と,外来草本がパイオニア植生として侵入し,河原が次第に植生化する過程を見出している. 一方,交互砂州に特徴づけられた礫床河川の最近の河道特性には,水衝部の深掘れ,横断面内比高差の拡大,みお筋の固定化,河道内樹林化と言ったものがあげられるが,とくに,低水路に見る落差のある瀬とその下流のゆるやかな縦断勾配をもつ淵といった河道ユニットは,礫床河川の代表的な景観である.しかし,落差の大きな瀬がさらに顕著化することによって低水路と州との比高さが増し,州上の植生繁茂,河道内樹林化を産む下地となり,礫床河川固有の河相変化を生むことが,渡良瀬川礫床区間の考察から抽出された.こうした最近の河道特性は,交互砂州形成を生むような大規模クラスの出水よりも,むしろ,その後に何回か経験する中規模クラスの洪水(低水路満杯をやや超える程度の洪水)によって特徴づけられていると考え,その形成プロセスを把握した.すなわち,こうした礫床河川の河相変化が反映される交互砂州河道での低水路形成に焦点をあて,側岸侵食を考慮した平面流数値計算による河床変動解析を行い,交互砂州形成後の中規模出水による低水路形成により,比高差の拡大,低水路固定化,落差の大きな瀬の形成とその付近での河岸侵食の顕著化が得られた.これらから,近年のセグメント1の礫床河川に見られる河道特性について,その形成プロセスを含めて基本的な構造を把握できた.
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