Research Abstract |
本研究は,災害統計及び災害に間接的に影響している要因を調査,分析することで,災害リスクの程度を定量的に評価することを目的としている.本年度は,以下の項目について資料収集・整理,分析を行った. 1)災害統計 昨年度収集・整理した災害統計をもとに,今年度は,特に災害の労働者の年齢別の被害の程度について検討した.死傷災害の発生率は就業直後の低年齢層が最も高いが,死亡災害の発生率は高年齢層の方が高く,被害の程度は加齢と共に高くなることが明かとなった.今後,年齢の他の種々条件下での被害の程度について分析する必要があることを確認した. 2)標準化工期を用いた災害の分析 昨年度行った標準化工期上での災害発生率をもとに,災害発生率の推移について分析した.結果,建設業労働災害は全体的には減少傾向にあるが,本研究で提案する標準化工期による分析から,建設作業によってその差は大きいことを定量的に明らかにすることができた. 3)海外の教育システムの照査 昨年度,海外での建設関連マネジメント教育は我が国より先行していることを確認しているが,さらに調査を進めたところ,大学によっては労働安全衛生に関する専門職を養成するためのコースを設けていることが確認され,大学,企業,社会システムを含めて安全衛生に関する取り組み方が異なることが窺えるものであった. 4)暑中期建設現場の作業環境測定 昨年度までの災害統計および災害事例分析から,近年,熱中症労働災害が建設作業中に多発していることを確認している.これを受けて,2005年8月,福岡市で実際に工事中の現場で温度,湿度,WBGTの測定を行った.結果,暑中期では始業時から産業衛生学会の基準やJISの基準を超えた環境で作業を行わざるを得ず,設備,作業計画等の対策にさらに勢力を注ぐ必要があることを確認した.
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