2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16560582
|
Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
小泉 大一 明治大学, 理工学部, 教授 (60126050)
|
Keywords | 転位 / キンク / 計算機シミュレーション / 輻射損失 / フォノン / 速度 / 超音速運動 / 分子動力字法 |
Research Abstract |
転位、転位線上のキンク、亀裂などの結晶内の欠陥は、弾性論では連続媒質中の特異線または特異点として扱われる。弾性体の中で特異点(線)か加速度運動をするとフォノンが輻射され、運動エネルギーを失うことはよく知られている。一方、格子を考慮すると、欠陥のエネルギーは格子の周期性に応じた変化をする。転位やキンクの場合には、このエネルギーはPeierls potentialであり、亀裂の場合にはlattice trappingという形で現れる。欠陥が運動する場合には、格子の周期性を感じ、それに応じて加速減速を繰り返しながら進むので、フォノンの輻射がおき、運動エネルギーの散逸がおきる。欠陥は、外力がする仕事とフォノンの輻射で失うエネルギーがつりあったところで定常的な運動に入る。フォノンの輻射に伴うエネルギー損失の大きさの程度を見積もることは、欠陥の運動を考える上で重要である。 外力が大きく、キンク速度が横波の音速に近づくと多重キンク対形成が起きることが、第2種のPeierls potentialを無視した転位の線張力近似では予測されていた。実在の結晶では第2種のPeierls potentialがあるので、これを無視した議論は正しくない。第2種のPeierls potentialの効果を調べるために、半導体結晶中にキンク対を持ったらせん転位を導入し、外力をかけた状態でのキンク対の運動を計算機でシミュレーションした。原子間相互作用はStillinger-Weberポテンシャルを使用した。転位速度が横波の音速をこえると、格子で計算しても多重キンク対形成が起きることを確認できた。転位がPeierls potentialを乗り越える際には、キンク対ができ、できたキンクが互いに離れていく結果、転位が前進するというPeierls機構を考えるが、通常は多重キンク対形成のプロセスは考慮しない。本研究の結果は、Peierls機構で多重キンク対形成も考慮する必要があることを示唆するものである。
|
Research Products
(2 results)