Research Abstract |
金属間化合物には高温強度特性や,耐酸化性・耐食性等に優れるものが多く,次世代の高温構造材料として高いポテンシャルを有している合金が多いが,大部分の金属間化合物は常温延性が乏しく,汎用的な塑性加工,特に冷間加工の適用は極めて困難とされてきた.しかしながら,L1_2型金属間化合物の中には室温でかなりの延性を示す合金も開発されてきている.そこで,L1_2単相組織のNi_3(Si,Ti)+B,Co_3Ti,Ni_3Al+Bの多結晶鋳塊に対し,繰り返し圧延-焼鈍プロセスにより組織調整を行うことで,圧下率90%以上の冷間圧延箔の作製に成功した.得られた冷間圧延箔はいずれの合金でも加工硬化が大きく,Hv【approximately equal】650〜700の高い硬度を示した.また,冷間圧延箔に等時(1h)焼鈍を行った結果,3合金とも軟化に先立って400℃〜500℃で一旦硬度が上昇し,その後600℃前後で軟化が起こり始め,900℃〜1000℃で完全軟化した.一方,組織観察の結果では軟化途中の700℃付近で試料全体が粒径数μmの微細再結晶粒で占められていた.室温引張試験の結果,加工ままでは塑性伸びは示さないものの,高い引張強度(約2GPa)を示した.また,焼鈍材では熱処理温度が高くなるにつれ強度は低下するが,伸びは大きくなり900℃〜1000℃の焼鈍で20%〜40%の塑性伸びを示した.なお,これら焼鈍材のなかで,Ni_3(Si,Ti)の600℃前後の焼鈍材では加工材よりも高い強度(UTS:約2.2〜2.3GPa,0.2%耐力:1.9〜2.0GPa)を示すとともに,加工材では全く観察されなかった伸び(2.0〜5.5%)も得られ,本冷間圧延箔は適切な熱処理により極めて高い強度と延性を付与することが可能であることがわかった.さらに,Ni_3(Si,Ti)とCo_3Ti再結晶材について高温引張試験を行った結果,両合金とも強度の逆温度依存性を示した.他方,室温延性をほとんど示さないB2型金属間化合物についても,等比組成のCoZr多結晶鋳塊に2段階熱間圧延および再結晶焼鈍を行うことで室温で約20%もの引張伸びを示すことを見出した.さらに,CoZr再結晶材に冷間圧延を試みた結果,割れのない良好な性状の薄板(圧下率:70%)が得られることを確認した.
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