2005 Fiscal Year Annual Research Report
環境負荷の少ない溶媒を用いる希土類元素の相互抽出分離
Project/Area Number |
16560645
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Research Institution | Kitami Institute of Technology |
Principal Investigator |
井上 貞信 北見工業大学, 工学部, 教授 (70003184)
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Keywords | イオン性液体 / N-ベンゾイル-N-フェニルヒドロキシルアミン / 配位子の分配挙動 / 希土類元素 / 抽出挙動 |
Research Abstract |
【緒言】イオン性液体(以下、ILと略)はほとんど揮発性がないため環境中への漏洩リスクが少なく、従来の有機溶媒に比べて格段に環境負荷の低いグリーンな溶媒として注目されている。現在、希土類元素の抽出に対して抽出溶媒としてILを用いた例は極めて少ない。本研究では抽出剤としてN-ベンゾイル-N-フェニルヒドロキシルアミン(BPHA又はHLと略)を用い、イオン性液体としては、ヘキサフルオロリン酸1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム([Bmim][PF_6]と略)を用いてBPHAの水相/IL相間の分配挙動、ランタノイド(Lnと略)の抽出挙動について検討した。 【結果・考察】IL相中でのBPHAの溶存状態と水相/IL相間の分配挙動:BPHAは溶媒中に非解離型化学種(HL型)として溶解しているとき無色透明な溶液が得られるのに対し、解離型化学種(L^-型)は黄色を呈する。本研究では有機相として、ILにBPHAを溶解して用いた。溶解条件(振り混ぜ時間、超音波かき混ぜ時間、溶解時の温度)によって溶液は淡黄色〜黄色を呈した。すなわち、BPHAはIL相中ではHL型、L^-型化学種が混在して溶解していることが推定された。またHL型は時間経過とともに徐々にL^-型に解離する。BPHAの水相/IL相間の分配は、極性が小さい有機溶媒では主としてHL型化学種が水相へ分配するのに対し、ILではL^-型化学種が水相へ分配する。L^-型化学種の分配定数は小さく、その結果水相中のL^-濃度が高くなり水相中で金属イオンとの錯形成に対して有利である。抽出溶媒としてILを用いると抽出性がよいという報告が多数みられるが、このことが抽出性に寄与しているものと思われる。希土類元素の抽出率曲線:有機相としてIL及びCHCl_3を用いてYb、Eu、PrのpH-抽出率曲線を比較した。その結果、これらのLnはCHCl_3ではpH5以上で抽出されるのに対し、ILを用いるとpH3以上で95%以上抽出されることが分かった。
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