2005 Fiscal Year Annual Research Report
メダカの自然発生突然変異率への転移性遺伝因子の関与
Project/Area Number |
16570002
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
古賀 章彦 名古屋大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (80192574)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
嶋 昭紘 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 名誉教授 (60011590)
金森 章 名古屋大学, 大学院理学研究科, 助手 (40324389)
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Keywords | トランスポゾン / 転移 / 自然突然変異 / 突然変異率 / メダカ / 脊椎動物 |
Research Abstract |
チロシナーゼ遺伝子にトランスポゾンの挿入をもつアルビノ変異系統があり、エクシジョンが起こると体色が野生型に復帰する。この系統を用いてトランスポゾンの転移を容易に検出する実験系を、前年度に確立した。本年度は、これを利用して転移頻度の大規模な推定を行い、以下の結果を得た。(1)T5系統での新規挿入の頻度は、0.65コピー/世代/配偶子と推定された。(2)HNI系統では0であった。(3)系統間のこの違いは、統計的に有意である。(4)トランスポゾン転移頻度と総突然変異率には、系統間で正の相関がある。(5)以上から、T5系統では自然発生突然変異の一部はトランスポゾンの転移に起因することが、推測される。 今回対象としたトランスポゾンは、メダカのTol2因子であり、トランスポゾンをRNA型・DNA型に分類する場合の後者に含まれる。そしてDNA型トランスポゾンの自然突然変異への関与の度合いに関して、脊椎動物ではこれはほとんどないとの認識が、大勢となっている。この状況で、少なくともメダカではDNA型トランスポゾンの関与が無視できない程度にはあることが、本研究で示された。この型の因子は、カット・アンド・ペーストの様式で転移する。したがって、遺伝的変異を創出したあとでカットでその場所から痕跡をなくし、変異の原因として認識されなくなることは、起こり得るものであると推測される。脊椎動物のゲノムにはDNA型トランスポゾンの残骸が大量に含まれるという事実も合わせて考慮すると、遺伝的変異の創出に関するDNA型トランスポゾンの役割は従来考えられているよりも大きいことが推測される。本研究で、この考えを提唱するに至った。
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Research Products
(3 results)