2004 Fiscal Year Annual Research Report
学習行動から個体数ダイナミクスを経て共進化に至る3者関係:実験・モデル解析
Project/Area Number |
16570011
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
嶋田 正和 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (40178950)
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Keywords | 被食-捕食系 / 寄生蜂 / 競争排除 / 共存 / 中程度の撹乱 / 優占種交替の振動 / 学習行動 / 寄主選好性 |
Research Abstract |
「食う-食われる」という捕食関係を含む3種の系にあらわれる、複雑な動態パターンの解析を実際の実験室昆虫個体群を用いて行った。2種のマメゾウムシを寄主とし、その共通の捕食者である寄生蜂1種からなる寄生蜂-寄主3種実験系を用い、累代実験・時系列解析・モデルによる解析を行い以下の点について研究を行った。 [1]寄生蜂の捕食圧を変えたときの動態はどのように変化するか?2種マメゾウムシのみの系では競争排除により必ず劣勢な競争者であるアズキゾウムシが消滅した。これに対し、寄生蜂を導入した場合、捕食圧の低い系では共存期間は寄生蜂を導入しないときとあまり変わらずアズキゾウムシは消滅し、捕食圧が最も高い系の場合には寄生蜂の食い尽くしによって寄主は2種とも消滅した。しかし、中程度の捕食圧のときには3者が長期間共存し、さらに2種マメゾウムシの個体数が交互に増加・減少を繰り返すような「優占種交替の振動」がみられた。このような寄生蜂の導入による系の共存持続性の促進メカニズムとして、(1)捕食者が存在するときの寄主の密度低下による種間競争の緩和と、(2)寄生蜂の頻度依存捕食による優勢な寄主の抑制という、二つの可能性が考えられる。 [2]この頻度依存捕食は、寄生蜂の産卵に関わる学習によって引き起こされている可能性がある。そのため、寄生蜂の学習行動についての解析を行った。その結果、羽化後アズキゾウムシとヨツモンマメゾウムシに3日間以上寄生させた寄生蜂は、それぞれの経験した寄主に対して寄主選好性を持つようになり、継続した寄主経験による強い羽化後学習の効果が検出された。このことから、ゾウムシコガネコバチでは、羽化後の寄生が寄主選好性の決定に重要であることが分かった。 [3]さらに、このような寄生蜂による学習を組み込んだモデル解析により、3者の共存時間が、寄生蜂の学習による頻度依存捕食により長くなる可能性が示された。
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Research Products
(1 results)