2005 Fiscal Year Annual Research Report
クマネズミ属の分子系統と種分化の時空間および発態学的要因に関する研究
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16570071
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
鈴木 仁 北海道大学, 大学院・地球環境科学研究院, 助教授 (40179239)
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Keywords | 生物地理 / 系統地理 / 核遺伝子マーカー / 核型変異 / 雑種形成 / 移入種 / クマネズミ / 遺伝的多様性 |
Research Abstract |
インドからインドネシアおよびオセアニアを含む広域な地域に展開するRattusグループの進化的パターンを検討した。ミトコンドリアDNAおよび核遺伝子IRBPの塩基置換度に基づき生物地理学的パターンを解析したところ、200-300万年前より系統分化を開始し、数回の系統の分散により種の多様性が達成されたものと推察された。初期の分散ではインド(Bandicota祖先系統)、東南アジア大陸部(Berylmysの祖先系統)、フィリピン(Paruromys等の祖先系統)、インドネシア島嶼(スマトラ、ボルネオ、ジャワ:Sundamysの祖先系統)、沖縄(Diplothrixの祖先系統)、スラウェシ(Bunomys祖先系統)を系統育成の拠点地域としてそれぞれ固有の系統が根付いたものと推察された。さらに、Rattus marmosuruss種群はスラウェシからニューギニア経由でオーストラリアに進出し、Rattus rattus種群はインドシナ半島、スラウェシを含むインドネシア島嶼において、R.rattus、R.exulans、R.argentiventer、R.hoffmanni、R.losea、R.nitidulusを始めとする多数の種に系統分化したことが示唆された。以上のように、Rattusグループはフィリピン、ニューギニアを含めたインドネシア島嶼群の地理的区画を拠点とし、複数回の移入と分断により高度の種の多様化が実現したものと考えられた。生息環境や体サイズにおいて多様であることも種の多様化に貢献しているものと思われた。
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