2004 Fiscal Year Annual Research Report
急速に分化した植物群における系統解析-複数の核遺伝子を用いて
Project/Area Number |
16570072
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
牧 雅之 東北大学, 大学院・生命科学研究科, 助教授 (60263985)
|
Keywords | 核遺伝子 / ギボウシ属 / ヤマハッカ属 / 系統解析 / 種間交雑 |
Research Abstract |
本年度は,ユリ科のギボウシ属とシソ科のヤマハッカ属について,核遺伝子を用いた解析を行った.ギボウシ属については,藤田(1976)によって記載されている分類群のうち,明らかに自然交雑起源であるものを除き,1分類群につき1個体からDNAを抽出,アルコール脱水素酵素2遺伝子座(Adh-1,Adh-2)がおよびグリセリンアルデヒド-3-リン酸脱水素酵素(Gap)をPCRによって増幅し,クローニングを行った.各個体から複数のクローンを選んで,合計約2260塩基対の配列を決定した.葉緑体DNAについての予備的なデータと比較して,明らかに変異が多数見られ,ギボウシ属のように急速に分化したと考えられるグループの系統推定に,核遺伝子が有効であることが示された.同一個体からのクローンは,大部分は単系統性を示すが,一部の分類群からのクローンでは異なるクラスタに属する場合があった.これは,交雑に由来する可能性とlineage sortingの可能性の両方があり得る.本年度は1分類群につき1個体のみのの解析であったので,来年度は広分布域種については,複数個体を用いた解析が必要であると考えられる.また,同様に急速に分化したと推定されるヤマハッカ属について,葉緑体DNAによる予備的な解析を行い,核遺伝子による解析に適する材料となりうるか検討した.その結果,このグループは,多くの分類群間で交雑を起こしていると推定される結果が得られた.このような交雑が広く起きているグループで,核遺伝子を用いた場合に,どのような結果が得られるかが,来年度の検討課題に挙げられる.
|