2004 Fiscal Year Annual Research Report
単食性ハバチ類の非異所的種分化と種形成地帯における生殖隔離の成立機構
Project/Area Number |
16570075
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
内藤 親彦 神戸大学, 農学部, 教授 (70031226)
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Keywords | ニホントガリシダハバチ / カタアカスギナハバチ / 寄生転換 / 一方向選択交尾 / 核型多型 / 適応度 |
Research Abstract |
1.ニホントガリシダハバチcomplexの同所的種分化の過程における生殖隔離の形成機構 本種は紀伊半島の北緯33度40分付近を東西にのびる南北約10kmの帯状地帯において、ジュウモンジシダからイノデに寄主転換をおこし、生殖的に隔離された新しいイノデ生態種を同所的に派生させていることは既に明らかにしている。本年度の調査・実験により、10kmの帯状地帯を南から北に向かって、雌成虫の産卵選択性・幼虫の可食性・選択交尾性の分化に顕著な地理的勾配が形成されていることが明らかになった。 2.分子進化によるニホントガリシダハバチcomplexの同所的種分化の検証 本種の種形成地帯を中心に、本州・四国・九州の各地から幼虫を採集し、ミトコンドリアのCOI遣伝子領域の塩基配列を比較し、分子系統樹を作成した。その結果、塩基置換率は低く、しかも生態種ごとにはクラスターを形成せず、地域ごとに2生態種を含むクラスターを形成した。この事実は、2生態種が地理的隔離を経て分化したのではなく、同一地域で新しい生態種を派生させてきたことを示唆している。 3.カタアカスギナハバチの染色体再配列による側所的種分化の機構解明 本種にはn=9・n=10・n=11の3種のロバートソニアン型多型が存在し、地域特異的に分布していることを既に明らかにするとともに、n=9→10→11の核型進化を予想している。本年度は3型が混在する岐阜県上矢作村付近の野外個体群を対象として、半数体核型の頻度分布および2倍体雌核型の適応度を調べた。その結果、ヘテロ雌はホモ雌に比べ適応度が低く、とくにn=9とn=11のヘテロ2倍体個体は生存できず、両者間の大きな生殖隔離要因として働いていることを明らかにするとともに、染色体再配列による種分化の実態を示した。
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Research Products
(2 results)