2005 Fiscal Year Annual Research Report
単食性ハバチ類の非異所的種分化と種形成地帯における生殖隔離の成立機構
Project/Area Number |
16570075
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
内藤 親彦 神戸大学, 農学部, 教授 (70031226)
|
Keywords | ニホントガリシダハバチ / カタアカスギナハバチ / タビラコハバチ / 寄主転換 / 一方向選択交尾 / 核型多型 / 適応度 / 雌性産生単為発生 |
Research Abstract |
1.ニホントガリシダハバチcomplexの同所的種分化の過程における生殖隔離の形成機構 紀伊半島の北緯33度40分付近を東西に伸びる南北約10kmの帯状地帯において、寄主転換を伴って同所的種分化が進行中である個体群について調査した結果、雌の産卵選択性は1遺伝子座支配であるのに対し、幼虫の旧寄主植物への不食化は雌成虫が新しい寄主植物に産卵を続けることによる条件付け効果としてもたらされることが確認された。これにより成虫の寄主植物産卵選択と幼虫の可食性の連動機構が明らかになった。イノデ派生生態種の雌はジュウモンジシダ旧生態種の雄と交配しなくなる一方向選択交尾は、旧生態種から派生生態種への遺伝子流入を阻止し、派生生態種の遺伝的独立性を保障するための重要な生殖隔離要因であることが明らかになった。 2.カタアカスギナハバチの染色体再配列による側所的種分化の機構解明 本種に存在するn=9,n=10,n=11の3種類のロバートソン型染色体多型は、n=9→10→11の順に派生し、派生核型が旧核型を駆逐し、同心円状に分布を拡大していく実態を明らかにした。特に、配偶子n=9とn=11の結合によって生じる2n=20の雌個体は致死で発生せず、n=9ゲノム個体群とn=11ゲノム個体群の強力な生殖隔離要因の働きをしていることを明らかにした。 3.3倍体雌性産生単為発生種タビラコハバチの発見と即時的種形成 研究当初予想していなかった3倍体雌性産生単為発生種を発見した。2倍体雌性産生単為発生ハバチはこれまで少ないながら知られているが、3倍体種はハチ目においても初めての発見であり、即時的種形成の可能性を示唆した。 4.総括 ハバチ類はそれらの生物学的特徴と結びついた非異所的種分化の形が複数存在し、種多様化に対応していることが明らかになった。
|
Research Products
(2 results)