2004 Fiscal Year Annual Research Report
NMRによるタンパク質分子複合体の迅速な立体構造決定方法の開発
Project/Area Number |
16570090
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小椋 賢治 北海道大学, 大学院・薬学研究科, 助手 (50270682)
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Keywords | NMR / タンパク質 / 立体構造 |
Research Abstract |
タンパク質と低分子有機化合物の複合体の立体構造をNMR法により決定するには,(1)タンパク質と結合した状態での低分子化合物のNMRスペクトル帰属,(2)タンパク質と低分子化合物間の分子間NOE情報の取得,の2段階のNMR解析が必要である.従来,上記のNMR情報を得るためには,同位体フィルター測定法を用いる必要があった.しかし,同位体フィルター法はパルススキームが複雑なため,信号のS/Nが悪く,解析に手間がかかっていた. 研究代表者は,タンパク質を2Hで均一ラベルすることにより,低分子化合物の1H-NMRスペクトルのみを選択的に観測する手法を考案した.今年度,この手法をGrb2タンパク質のSH2ドメインとその阻害剤(NIHにおいて開発された薬物候補化合物)の複合体試料に適用し,阻害剤の1H-NMRスペクトル帰属を短時間で完了することができた.従来型の同位体フィルター法を用いた場合では,信号の帰属に多大な時間を要しつつも帰属を完了することができなかったことから考えて,今回考案した2Hラベル法がタンパク質-低分子化合物の立体構造解析に役立つことが実証できた.さらに,2Hおよび15Nで均一ラベルされたGrb2 SH2タンパク質と阻害剤複合体において,15N-edited NOESYを測定したところ,阻害剤の水素とタンパク質のアミド水素(H2O溶媒中ではアミド位の2Hは容易に1Hに交換する)間の分子間NOEを多数観測することに成功した.これは,タンパク質が2Hラベルされたことにより,試料分子中のプロトン密度が低くなり,結果的に、遠距離の水素原子間相互作用を感度よく測定できたことを示している. 2Hラベルタンパク質を用いることで,(1)低分子化合物のスペクトル帰属が極めて容易になり,(2)分子間相互作用を,選択的かつ高感度に測定することを確認した.実際,Grb2 SH2とその阻害剤複合体の立体構造を上記手法により得られた距離情報に基づき,迅速かつ精密に決定することができた(論文投稿準備中).
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