2004 Fiscal Year Annual Research Report
小胞体カルシウムポンプの触媒部位からCa^<2+>輸送部位への共役エネルギーの伝達機構
Project/Area Number |
16570091
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
大保 貴嗣 旭川医科大学, 医学部, 講師 (90207267)
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Keywords | Sarcoplasmic Reticulum / Ca2+-ATPase / SERCA / Darier Disease / Hydrophobic Interaction / phosphoenzym / phosphoenzyme / Ca2+ transport |
Research Abstract |
1.筋小胞体Ca^<2+>ポンプATPaseはリン酸化部位を含む細胞質ドメイン(A、P、N)とCa^<2+>輸送部位を含む膜貫通ドメインより成る。このAとPの接触部位の疎水性結合性相互作用が、本酵素のATP分解反応におけるリン酸化中間体(EP)とその加水分解過程に重要な役割を果たしていることを示した。 2.Ca^<2+>ポンプ(E2)にBe^<2+>とF^-、Al^<3+>とF^-、およびMg^<2+>とF^-が結合したBe/F/E2、Al/F/E2、Mg/F/E2の複合体は、EPとその加水分解過程の安定なアナログであり、それぞれ、基底状態アナログ(Be/F/E2)、遷移状態アナログ(Al/F/E2)、酵素・生成物複合体アナログ(Mg/F/E2)であることを示した。さらに、リン酸化中間体の加水分解過程における触媒部位の変化によりCa^<2+>輸送路が閉じて小胞体内腔からCa^<2+>を漏出させない構造が獲得されることを示した。 3.優性遺伝性角化異常症ダリエー病は、小胞体Ca^<2+>ポンプ2b型の遺伝子異常によりおこる。ダリエー病家系の遺伝子解析より報告された51種のミスセンス変異について発現と機能を解析した。そのうち48種では、各々の変異がポンプの発現と機能に強い阻害をもたらすことを示した。残り3種は、僅かなCa^<2+>親和性(L321F、M719I)あるいは僅かなCa^<2+>輸送速度の低下(I274V、M719I)、また小胞体内腔に蓄積したCa^<2+>によるfeedback阻害の不具合(L321F)をもたらした。特にL321Fでは小胞体内腔のCa^<2+>濃度が異常に高く設定されることを意味する。この家系の患者は皮膚症状に加えて神経症状・行動異常を呈している。小胞体内の異常な高濃度Ca^<2+>が小胞体の機能に影響し、脳・神経細胞において障害をもたらすことが示唆された。
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