2005 Fiscal Year Annual Research Report
新しいシグナル制御因子としての核内膜蛋白質の作用機序の解析
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16570152
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
長田 真一 秋田大学, 大学院・医学研究科, COE主任研究員 (00244484)
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Keywords | 血管新生 / 核膜蛋白 / シグナル伝達 / TGF-β / 発生生物学 / 遺伝子欠損マウス / 国際情報交換 / アメリカ |
Research Abstract |
我々は、核膜内膜蛋白質Man1の機能を「シグナル制御因子」という観点から研究してきた。本研究では、Man1のin vivoでの機能を調べるために、Man1欠損マウスの解析を主に行った。昨年度は、ホモ変異胚は胎生10.5日前後に致死となること、その原因として、原子血管網からリモデリングによって成熟した血管ができる、血管新生過程の異常が考えられることを報告した。本年度は、ホモ異変胚において血管新生異常が起こるメカニズムについて詳しい解析を行った。Man1は血管新生過程においても重要な役割を果たすTGF-β経路の制御因子と考えられることから、Man1欠損胚の血管新生の異常の根底に、TGF-β経路の制御の異常があるかどうかをまず検討した。その結果、Man1欠損マウスでは、TGF-β1-Smad2/3経路が異常に亢進していることを見出した。この経路は、フィブロネクチン(FN)などの細胞外マトリックスの産生を促進して血管内皮細胞の増殖と移動を阻害し、血管新生を抑制する作用があることが知られている。Man1欠損胚におけるFNの発現を調べた結果、FNの発現の上昇が、RT-PCR、ウェスタンブロットで認められたばかりでなく、免疫組織染色においてもFNの異所性の沈着が血管周囲を含む胚全体にわたって認められた。以上の結果から、「TGFβ1-Smad2/3経路を介する細胞外マトリックスの産生を制御することによって、血管のリモデリングを調節する」という、Man1の新しい作用機序が明らかになった。本研究は、核膜蛋白質と血管新生の関連を初めて見出した点で、細胞生物学的・医学的意義が大きいと考える。
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