2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16570184
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
中川 真一 独立行政法人理化学研究所, 中川独立主幹研究ユニット, 独立主幹研究員 (50324679)
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Keywords | 網膜 / 幹細胞 / Wnt / Notch / HES / 層構造 / 分化 / グリア |
Research Abstract |
器官形成の過程では細胞の増殖・分化は正確に制御されており、生み出された細胞が個々の形質に応じて適切な位置に配置されることで機能的な組織が形づくられる。本研究は、特に脊椎動物の中枢神経系に特徴的に見られる層構造に注目し、ニワトリ網膜をモデルシステムとして用いることで、器官形成の諸過程がどのような分子メカニズムによって制御されているかを明らかにしようとしている。 我々はこれまでの研究において、分泌性のシグナル分子であるWnt2bが網膜の再集合培養の系で正しい層形成を誘導する事が出来る事、さらに実際の生体内ではCiliary Marginal Zoneと呼ばれる領域に存在する幹細胞の維持に関わっている事などを明らかにして来た。本年度はWntの下流でどのようなシグナルが伝わる事によって幹細胞が維持されているのかについて詳細な解析を行なった。その結果、網膜の幹細胞領域では、従来Notchの下流で働いていると考えられていたHES1がWntシグナルによって制御されている事が分かった。HES1を過剰発現すると、Wntの過剰発現と同様の表現型、すなわち幹細胞の分化の抑制が観察され、逆にHES1の機能をドミナントネガティブ分子によって阻害すると、幹細胞が未分化状態を保てずに神経細胞へと分化する事が分かった。さらに興味深い事に、HES1のファミリー分子であるHES5は網膜の中心部でNotchシグナルの制御を受けており、過剰発現するとミュラーグリア細胞を誘導した。これらの観察から、網膜の細胞の分化はWntとNotchの2つのシグナルによって制御されており、前者がHES1を介してマージン領域で幹細胞を維持するのに対し、後者はHES5を介して分化を抑制しつつ決められた数の神経細胞を作り出した後に最終的にミュラーグリアを誘導している、という概念を提出する事が出来た。
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