2004 Fiscal Year Annual Research Report
新植物開発におけるトランスポゾン様遺伝子Revolverの動態と分子育種的利用
Project/Area Number |
16580004
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
富田 因則 国立大学法人鳥取大学, 農学部, 助教授 (70207611)
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Keywords | トランスポゾン様遺伝子 / 動態 / ストレス / 多様な生態系 / スロットブロット解析 / コピー数 / 量的変異 / 温暖湿潤な気候 |
Research Abstract |
新規の構造を持つトランスポゾン様遺伝子Revolverは六倍性のパンコムギコムギにはほとんど存在しないが、その祖先種の二倍性コムギや近縁種のライムギなどコムギ育種に有用な資源植物に多数存在しており、コムギ連植物の長い進化の過程を経て増減したと考えられる。ある種のトランスポゾンはストレスにより可動性になることが知られている。野生四倍性コムギTriticum dicoccoidesは栽培型の六倍性、四倍性コムギの祖先種であり、コムギやライコムギの育種素材である。本研究では、T.dicoccoidesの起源地に近いイスラエルの多様な生態系の自生系統について,Revolver遺伝子の量と多型を解析し、生態ストレスによるRevolver遺伝子の動態を考察した。気温、降水量、湿度、標高、土壌などの気象や地理的な条件が異なるイスラエルの19の生態系における野生四倍性コムギT.dicoccoidesの209の自生系統から、CTAB法でゲノムDNAを抽出した。各系統のゲノムDNAを1ng、100ng、10000ngずつナイロンメンブレンにスロットプロットし、Revolver遺伝子のcDNAクローンpSc5をプローブとするハイブリダイゼーションを行い、各系統におけるRevolver遺伝子のコピー数を測定した。さらに、サザンプロットハイブリダイゼーションによってRevolver遺伝子のDNA断片長多型を解析した。T.dicoccoidesの自生系統に関するスロットプロット解析の結果、生態系によるRevolver遺伝子の著しい量的変異が見出された。Tabigha、Gamla、Ammiad地域の自生系統にはRevolver遺伝子が約5000コピーからライムギに匹敵する約9000コピーに達するものがあった。これらRevolver遺伝子が多数検出された地域は、年平均気温が19-24℃で高く、降水量も436-700mmと多い。一方、J‘aba、Gitit、AmirimなどRevolver遺伝子が数百コピー程度と少ない地域は、年平均気温が17-21℃と低くて年間熱帯夜数も25-57日と少なく、降水量も360-500mmで少なく、高温乾燥の季節風であるシャラーブが85-90日も多発する地域である。以上のことから、Revolver遺伝子の増幅には温暖湿潤な気候が適していると言える。
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Research Products
(3 results)